東洋医学/東洋医学とは

東洋医学が考える病気の原因(2ページ目)

東洋医学では体内の気血水、その気血水を作る五臓六腑、経絡経穴という気血水の運搬ルートがあり、それぞれが過不足なく、動きも安定し、流れもちょうど良いことを健康としています。このバランスが崩れると病になると考え、アンバランスを整えることで予防や治療を行います。それでは東洋医学が考える病気の原因についてみていきましょう。

鈴木 元

執筆者:鈴木 元

はり師・きゅう師 / 東洋医学ガイド

食事は大切、不摂生が病気を起こす

「食の大切さ」については誰もが知るところでしょう。テレビ番組や雑誌などでもたびたび取り上げられていますが、それだけ大切なものであるということです。
食事をするということは健康であるための基本的条件であり、東洋医学でいう気血水を獲得するための行為です。

ただし食事の不摂生があると五臓六腑に悪い影響を与えます。もちろん五臓六腑で作られる気血水もまた影響を受けます。長い年月、バランスの悪い食事を摂った結果、体質異常や発病の要因になることがあります。飲食不摂については私自身もいつも気にしているところです。こちらも詳しくご紹介します。

飲食不摂

飲食不摂(食事の不摂生)


  1. 過飢:飲食物不足により、気血水が作られず、体調不良や抵抗力が低下してしまいます。貧困によって食事がとれない人はもちろん、病気などで食事が食べられない人も含まれます
  2. 過飽:食べ過ぎによって消化が間に合わず、蓄積され、胃腸機能が失調し、腹痛や嘔吐を起こします。完全に食事量がオーバーしている人です。昔から腹八分目というし、よく噛んで食べなさいというのに早食いだったりする人です
  3. 飲食不潔:腐ったものを食べるため、食中毒を起こし、腹痛や嘔吐、下痢、発熱を起こします。当たり前ですが、腐ったものにはバイ菌がいますし、フグの毒などは食べてはいけません。ただ、飲食不潔は個人差がありますので、旅行先で屋台のご飯を食べて、自分だけ下痢になった…というのは体質の問題ですね。疲れているとき、小さいお子様、お年寄りなどは特に気を付けてほしいです
  4. 過食生冷:冷たいものを食べると体温を奪い、体内に冷えが生まれ、お腹が冷えて痛みます。また湿気の多いものを食べるので、体内に過剰な水分、痰湿が増え、下痢を起こします。夏の暑い季節にかき氷をたくさん食べ、お腹が冷えて下痢をした経験のある人はたくさんいると思います。かき氷に限ったことではないのですが、生野菜、お刺身、もちろん水分などを摂りすぎると水分が多く、冷えます。ただし、何も冷たいものが悪いのではなく、摂り過ぎが悪いだけですので間違えないようにしましょう。あくまでもバランスが大事です
  5. 過食辛辣:辛い物を食べると胃腸に熱がこもり、体内の潤い、陰液を消耗し、口の乾き・便秘・痔、ひどい場合は出血を起こします。これも誰もが経験するでしょう。激辛を食べると胃に熱いものがこみ上げてきますよね?特に男性は、辛い物を食べるとお尻の穴が痛くなるという意見も多く耳にします。熱はカラダの潤いを打ち消してしまう働きがあります。辛いものの食べ過ぎがカラダに悪いということも認識しましょう
  6. 過食肥甘厚味:油っこい、甘い、味の濃いものは胃腸に熱と湿を作り、体内に水分のない粘々した痰湿(湿熱)ができ、下痢・しつこいむくみ、腫瘍などを起こします。太っている方に多いですね。ここにはお酒も入ってきます。ビール飲んでから揚げを食べる。そして〆にラーメン。次の日、むくんでいませんか?私は糖分や塩分、油分とアルコールは目がパンパンに晴れてしまいます。食べてはいけないのではなく、食べ過ぎは良くないということです。上手に付き合いましょう!

薬膳というと東洋医学と思われがちですが、実は世界各国で薬膳の概念があります。インドのカレー、イギリスのハーブも食事と健康を結びつけた薬膳です。産地のものを旬に食すということが、大自然と私たちとの融合であり、必要な栄養素を動植物から得るというわけです。

とはいえ、生活様式もずいぶん昔とは変わり、産地や旬も関係なく食べることができます。となると自然との融合が難しくなります。どの食事が良いとか悪いではなく、自分に必要なものを食べることこそ薬膳の大原理なのです。ご自身を理解しながら食事に気を使いたいところです。


働き過ぎだけでなく、ゴロゴロしていても病気になる!

適度な労働や運動はカラダを強くします。また十分な休息は疲労を取り去り、体力を回復させます。生活の中で私たちは適度に動き、適度に休むということを繰り返し行っていますが、どちらかに過不足が起こるとカラダに負担が来るということは誰もが知るところです。それを東洋医学では発病原因の一つと考えています。

労逸

労逸(過労と運動不足)


過労と運動不足は肉体だけでなく、精神にも影響を及ぼします。昨今メンタルケアは注目されています。気になる方は是非、東洋医学のスペシャリストに相談してみてはいかがでしょうか?

さらに特徴的なのは「房事」が入っていることです。房事は性行為で、マスターベーションも含まれますし、男女とも共通しています。男女の精液は生命の根本であると考えています。その精液の消耗する過剰な行為は「腎精」といわれる生命活動を支える物質の消耗になりますので、耳鳴りや閉経、不妊など加齢的なトラブルが発生します。


過剰な感情だって病気になるんです

七情とは、七つの情、つまり七つの感情を表しています。古くから感情が病の原因になるということを東洋医学は知っていました。この考え方は東洋医学独特と言っていいと思います。昨今、心の病で苦しんでいる方が多くなり、社会問題にまで発展しています。この七情の考え方が多少でも解決の一役を担えるのではないかと考えています。

七情

七情(感情の過剰変化)


イライラしていると顔を赤くし、蒸気が上がるイラストが使われたり、悲しすぎて生きる気力がないなど、私自身も何度も経験したことがあります。心は肉体に宿り、また肉体は心によって動きます。その両者の関係を大切にしてこそ自然であると東洋医学は考えています。

参考)
  • 外傷(怪我など)・寄生虫・虫獣傷(動物や虫による傷害)
「古傷が痛む」ということは多くの人が経験していることではないでしょうか?
打撲やねんざ、骨折、切り傷などの怪我は、体内にオ血という血の塊を作ると考えています。東洋医学ではオ血があると痛みを伴うと考えているので、過去に怪我や手術の経験はあるかどうかカウンセリングで聞いていきます。また、虫や獣による傷も同じです。

  • 代謝異常(気滞・オ血・痰湿)
何度も繰り返しますが、私たちのカラダの活動は「気血水」が過不足なく、滞りなく巡っていることが大切です。しかし、六淫や飲食不摂、労逸、七情などが原因となって臓腑や循環システムが正常に機能しなくなると体内に異常な代謝産物が作られます。気が滞る=気滞、血が滞る=オ血、水が滞=痰湿があります。


以上で東洋医学が考える重要な原因についてお話をしました。一覧表にすると簡単そうな原因も、掘り下げていくとお互いに複雑に絡み合います。どの要素も切り離すことができないため、原因を追究しにくいという難点もあります。

私たちのカラダは鏡のようなもの。体内の様子や精神状態を表しています。全身をくまなく観察すると、必ず答えは出ています。それを見逃さないのが東洋医学のスペシャリストなのです。病気で悩んでいる方、予防を考えている方は是非、東洋医学を熟知したスペシャリストに相談してみてはいかがですか?

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