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代ゼミの凋落にみる正しい塾・予備校の選び方は?(3ページ目)

ちまたで大きなニュースになっている代々木ゼミナール(以下代ゼミ)の大幅なリストラ問題は、「少子化」や「大教室」といったおざなりの言葉でしか説明されていない。現場にいる筆者がここに至る経緯と事実を詳細に説明し、広告や単なる数字にだまされない正しい塾・予備校の選び方を考える。

吉田 敦彦

執筆者:吉田 敦彦

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代ゼミの改革が遅れた理由は?

代ゼミの経営側には優秀な人材もいたはずだろうし、その対策もいろいろと試されたが、現役の高校生の要求にうまく迅速に対処できなかった。その主な理由はふたつある。
  • 基幹駅戦略(主要都市の主な駅前に予備校を作ること)
  • 持ちビル主義(贅を尽くした素晴らしい校舎を建てること)
以前、生徒は遠くからでもわざわざ電車に乗って有名講師に会いにやってきてくれた。しかし、先に述べたような理由で、現役高校生は、高校至近の駅や居住地付近から移動しなくってしまったのである。そうなれば、各地方の駅近くに小さな校舎をつくればいいのだが、豪華な校舎が基本の代ゼミはそこからなかなか脱却できなかったのである。

200億円を投じた新宿のタワー校舎も今となっては太平洋戦争時の巨艦戦艦大和の残骸のように見える。機動力という点で著しく劣っていた。ただ反面、不動産価値は高く、手放しても再利用しても利益を見込める。そういう点で2020年開催予定の東京オリンピックというイベントが今回の大リストラの大きなきっかけの一つになったようだ。

私見だが、今回の全国での校舎廃止はもっと以前に、5年前にやるべきだったと思える。言い換えれば、経営陣が職員や講師を守ろうとしてくれた努力の結果だったかもしれない。

そして予備校関係者を震撼させているのが「2018年問題」(出典:文部科学省学校基本調査)である。今まで横ばいで推移していた18歳人口が、2018年に現在のおよそ3分の2まで減少する。具体的には約17万人の受験生がいなくなる計算だ。この時点でかなりの大学も危ないのではないかと言われている。まして、より少なくなる予備校生を奪い合うことで更に大きな淘汰が起こるだろう。

代ゼミ再生はあるのか?

かつて「机の河合、生徒の駿台、講師の代ゼミ」と言われた。それだけ今でも講師には個性的な人が多く、人間的魅力にも溢れている。現在在席している生徒達の満足度は非常に高い。だから敢えて提言したい。単に映像授業を増やすのではなく、生授業のぴりぴりとした臨場感を大切にして欲しいと思う。キーポイントは3つある。
  • 生授業と補助的な映像授業
  • 少人数制
  • 夢のある教育理念
河合塾や駿台にあって、代ゼミに欠けている最大のものは何だろうか。それは「夢のある教育理念」である。人間の無限の可能性を信じ、それを広げてあげようとする気概である。夢の無い職場には、悲壮感のみが漂う。生授業を大切にするなら講師料を下げざるを得ないだろう。それなら少人数でも利益があがり、細かい部分では映像授業で補填すると効果的だろう。

塾や予備校の選別で重要なものは、進学実績だけではない。その背後にある教育への熱望や理念である。その塾や予備校にそういう考えが感じられれば、子供達の成長を託せるだろう。

たとえ塾、予備校であっても教育をしていることを忘れてはいけない。教育とは非常に大切な仕事である。将来の日本を作る作業だ。一旦火の中に身を投じ再生するフェニックスのようにいつか代ゼミが甦ることを信じる。

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