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代ゼミの凋落にみる正しい塾・予備校の選び方は?(2ページ目)

ちまたで大きなニュースになっている代々木ゼミナール(以下代ゼミ)の大幅なリストラ問題は、「少子化」や「大教室」といったおざなりの言葉でしか説明されていない。現場にいる筆者がここに至る経緯と事実を詳細に説明し、広告や単なる数字にだまされない正しい塾・予備校の選び方を考える。

吉田 敦彦

執筆者:吉田 敦彦

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2012年頃からの状況

数年前から驚くべき現象が起こってきた。夏期や冬期講習が成立しないで閉鎖される授業が多く出てきたのである。代ゼミはその分は保証しないので、我々講師は非常に困る事態が生じてきたのだ。すると閉鎖された授業は翌年は開講されず、どんどん講習会の割り当てが減っていった。理科社会などの副教科の担当者は非常に困っていた。生徒の集客数は講師評価に直結するで、元々少ない生徒を講師間で奪い合うようになり、人間関係がかなりぎすぎすし出したのもこの頃からだ。

そして本来ある程度集まっているはずの予備校部門の授業までも科目によってはゼロになるという事態が起こってきた。特に首都圏の各校舎の生徒の減少率は地方校舎よりひどかった。具体的には関東圏のある校舎では1000人の収容能力に対して50人程度の予備校生しか集まらない校舎が出現し出した。私の税理士の試算ではあるが、5~6年前から巨額の赤字がでていただろうと推測される。

では他の予備校はどうかというと、駿台講師の話では、数の点では駿台の一人勝ち状態だ。現役部門でも予備校部門でもほぼすべての校舎で満員御礼状態になっている。河合塾と掛け持ちしているある数学の講師の話では、河合塾は現役部門でかなり苦戦しており、一部が閉鎖されているという。ただ、予備校部門では多くの受験生を集めているが、質の低下が著しいそうだ。これは紛れもない「代ゼミ化」現象(現役高校生が減り、予備校部門の生徒の学力低下)と言える。なぜ駿台が一人勝ちなのかについては別の機会にじっくり述べたいと思う。

予備校凋落の原因とは?

18歳人口の減少で教育産業が衰退する中でも、予備校の衰退は著しい。なぜ高校生は浪人しなくなったのだろうか。現在の高校生は、2008年のリーマンショック以降2014年に至るまで、全般に安定志向で、ランクを落とした大学選びをするようになっている点がある。そのため浪人してまでレベルの高い大学を目指すより、入れる大学に入ってしまいたいという漠然とした雰囲気があるようだ。具体的には以下の要因がある。
  • 大学全入の時代の到来
  • 高校の学内予備校化
  • 地元塾の繁栄
一つは18歳人口の減少により各大学がかなり水増し合格を多くだし、現役生でも浪人せず合格できるようになった点である。AOや推薦は国公立大学でもあり、優秀な生徒の青田買いは非常に激しくなっている。東大は2016年から推薦入試が導入される。京大も2016年から特色入試という名前で試験を課さない入試を行う予定になっている。

最近私自身、高校の課外授業を担当している。高校生が学校からでないで、塾や予備校の授業を補習として受けられるもので、全国で学校自体が塾化する傾向が非常に増えている。これは元々中高一貫校がやっていたスタイルの踏襲だ。生徒にとっては、学校内で完結するし、費用も塾や予備校にいくより安くすむという利点がある。更に学校に来てくれるのは実際の予備校の講師であるから何の問題もない。また学校にとっては進学実績が上がるので翌年の募集によい影響も大いにある。

また首都圏、各都道府県では高校や生徒の居住地に近いところにある塾が非常に繁栄している。私が現在教えている「創学ゼミナール」は、創志学園グループで、高校生3年生だけで数3000名もいる。しかも創学ゼミナールの教室は兵庫県の三宮から以西の高校や住宅地の近くの駅にある。対象となる学校を意識した校舎設置をしている。代ゼミの兵庫県にある三宮校の2014年4月時で、高校生3年生が合計で十数名なのと比較してもらいたい。
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