53駅のエピソード、読みごたえあり
紙面の半分以上は、駅ごとに読みきりとなるお話しで占められています。京都方面29駅、神戸方面13駅、宝塚方面11駅。各々の駅について文化、歴史、人物等々、切り口は様々です。歴史のお話し、なかでも古墳時代までのエピソードが比較的多いです。京都線の「南茨木」駅は「古代、日本しだいの銅鐸工房があった!?」、「富田」駅は「日本最大級の埴輪生産遺跡があった!?」、神戸線の「園田」駅は「邪馬台国東遷説ー謎を解く鍵は田能遺跡にある?」。いずれも古代歴史ファンには見逃せない内容です。もとよりファンの方ならすべてご存知かもしれませんが、その場合は「チェック用」として目次をみるのもよいかもしれません。阪急沿線の基本的事項がおさらいできる内容!
駅毎のエピソード以外も充実しています。まずは定番の「小林一三」についての話。沿線のお祭りの話。ただし、この二つについては沿線に住んでいる方からならば阪急沿線を中心に紹介しているフリーペーパー「TOKK」の記事などで既に何度も見て知っている内容かもしれません。
そんな人でも嬉しいのは「沿線で味わえるご当地グルメ」。十三の「喜八洲総本舗」の「みたらし団子」、「やまもと」の「ねぎ焼」、箕面の「モンちゃんせんべい」、京都の「鯖寿司」、宝塚の「炭酸せんべい」等々。阪急沿線で手に入るいろんな食べ物が紹介されています。どちらかといえば「B級グルメ」とも言えますが……。沿線住民なら「全部食べたことある!」と胸を張って言えるように、チェックリスト代わりに使いたいものです。「沿線ゆかりの有名人」も面白いです。複数名のノーベル賞学者、複数名のタカラジェンヌ、複数名の吉本芸人等が紹介されています。コーナー初めの4行目にいきなり放送作家の高須光聖(たかす みつよし)が紹介されているあたり、著者のマニアックぶりが感じられます。
阪急沿線の事をほとんど知らないという方には十分楽しめる内容ですが、「俺はある程度知っている、さらに知りたい!」といった向きには物足りないかもしれません。もしも「阪急沿線検定」なるものがあれば「3級のテキスト」位の難易度です。あっ、なんとなくのニュアンスなのであまり気にしないでくださいね。