しかし、精神状態はボロボロに…
ガイド:しかしながら、2枚のシングル、1枚のミニ・アルバムでカンアキトシとしてのソロ歌手活動は停止し、ご自身は渡米されますよね。この辺り、どこまで訊くべきか迷う所なんですが、当時の心境を語って頂けませんか?
カン:
ソロデビュー前からつきあっていた男性がいました。ミュージシャンですが、彼には凄いソウルがありました。まだ発揮しきれてない時期でしたが、才能あると尊敬していました。結婚まで考える大好きな人でした。しかし、お互いの両親や職場環境が障害となって、結局別れました。実は、当時私のお腹の中には彼の赤ちゃんがいたのです。全く同じ時期に、UAさんやCharaさんは産めるのに、私は駄目なんだ…という相当な敗北感と絶望とショックで声がでなくなりました。彼は前々から行きたかった異国の地に行き、いつも国際電話で話はしていましたが、しばらくして連絡が途絶えて、情緒不安定になり、精神状態はボロボロになりました。ショックが大きすぎて、何も考えられなくなりました。そして少し時間をおいて、私は渡米したんです。本当に女性は心も体も傷つくんだという事を身を持って知りました。
ガイド:
立ち直るにはかなりの時間と精神力がいったことと察します。でも、そこまでお話しいただいて、ありがとうございます。
カン:
さらけ出して立ち直ろうと自分を奮い立たせているだけなんですけどね(笑)。
enjeuとして再スタート
ガイド:2005年のアルバム『Introduction』でソロ活動再開となります。ここで、カンアキトシはサブ的扱いで、enjeuという名義になっています。新しい名前にはどのような気持ちを込めたのでしょうか?
Introduction (amazon.co.jp)
カン:
「enjeu」 というのは意味は「争点」という意味なんですよ。
ガイド:
「争点」…意味深ですね。
カン:
争点とは「みんなが話し合うテーマ」。私の歌がそういうものを生み出してくれればという想いでつけました。アルバムの収録曲も、それぞれ私がインスパイアされた人や歌から生まれました。私の歌からも誰かをインスパイアできたらと。
ガイド:
「Break Through The Light」「Getting Higher」等を聴いていると、サウンドの方向性は、よりジャジーによりブラジリアンになっていますね。これは、約5年のブランクでの体験が影響したのでしょうか?
カン:
もともとやりたい方向性がメジャーの時に打ち出せなくて、というか理解されず、これだけブランクが開いた、という感じですね。そしたらボサノヴァブームも到来、みたいな。
ガイド:
「Break Through The Light」は、松本浩一さん(sonicballon名義) によるリミックスもあり、とても相性のいいリミックスで好きです。Urban Danceのことを昔教えて頂くために、松本浩一さんにはお世話なりましたが、この感じの音でぜひもう一度ライヴで聴いてみたいです。
カン:
ありがとうございます。是非何かの機会でライヴをやらせてもらいたいです,松本さんも今関西にいると聞いているので飛び入りして来たら面白いですね。
ガイド:
「The Creator Has A Master Plan」は、テナー・サックス奏者として知られるファラオ・サンダースのカヴァーですね。僕自身詳しい分野ではないですが、クラブジャズ系の文脈でも人気のある方だと理解します。カンちゃんがこの曲を選んだ理由は。
カン:
RoutineというDJ集団が渋谷にあるバーインクスティックでいつもイベントをしていたんです。
彼らがリリースしたアルバム『Routine』が大好きで、その中でも「The Creator Has A Master Plan」のヴォーカルの方の声の感じに自分が共感したところからやらせて頂きました。