介護/食事・口腔ケア

“ごっくん”できない高齢者…そのカギは「とろみ」

「最近おばあちゃん、お茶を飲むときムセるんだよね」なんてことはありませんか?意外に思われるかもしれませんが、嚥下機能が低下したお年寄りは「さらさらした飲み物」を飲み込むのに苦労をします。これを解消するには飲み物に「とろみ」をつけることが効果的です。今回はその「とろみ」についてお話したいと思います。

平井 千里

平井 千里

管理栄養士 / 実践栄養 ガイド

小田原短期大学食物栄養学科 教授。女子栄養大学栄養科学研究所客員研究員。女子栄養大学大学院 博士課程修了。名古屋女子大学 助手、一宮女子短期大学 専任講師を経て大学院へ進学。肥満と栄養摂取の関連について研究。前職は病院栄養科責任者(栄養相談も実施)。現在は教壇に立つ傍ら、実践に即した栄養情報を発信。

...続きを読む

過信しないで! お茶でムセるお年寄り

とろみの固さ例

お年寄りの喉は、さらさらした飲み物は飲み込みづらいのです。一人ひとりの体調に合わせたとろみをつけて、上手にお茶を飲んでいただきましょう。

「おばあちゃん、お茶にしましょう」日常によくあるほほえましい1コマです。しかし、お年寄りにとってはこんな何気ない日常の動作に危険が潜んでいます。意外にも、「お茶」などのさらさらした飲み物は飲み込みづらく、ムセやすいのです。

その理由は「高齢者は食べるのも命がけ…誤嚥性肺炎の原因と対処法」と食事の関係でご説明したように、飲み込む動作は「反射」で起こるため、意識することができません。しかしお年寄りの場合、この「反射」が起こるスピードが遅く、お茶などのさらさらした飲み物が通過する早いスピードについていくことができないのです。そのため気管のほうへ飲み物が入っていってしまい、ムセるのです。これを防ぐためには、飲み物が喉を通過するスピードを遅くするという方法があります。

そのためには飲み物に「とろみ」をつけることが有効です。

「とろみ」って何?

「とろみ」はひと言で言うならば、中華料理によくある「あんかけ」の「あん」のような少しとろとろとした形状のことです。中華料理のあんかけは、ご存知のとおり片栗粉等のでんぷんを使っています。作り方はさまざまなレシピをご覧いただくと分かるように、加熱調理の最後に水溶き片栗粉を回し入れて作ります。ここで覚えておいていただきたいことは、でんぷんを使った場合、加熱処理をしなければ、「とろみ」がつきません。

一方で、実際の日常生活を考えてみてください。急須で入れたお茶を鍋に移して加熱して、水溶き片栗粉を回しいれるということはあまり現実的ではありません。特に日本茶は少し低い温度で入れ、香りを楽しむものですから、できれば再加熱したくないのが人情です。

そこで、加熱しなくてもとろみをつけることができないかと、試行錯誤した結果、登場したのが今回ご紹介する「とろみ剤」です。

「とろみ剤」とは?

「とろみ剤」とは、主に植物からとれる粘り気のある素材で、果実からとれるペクチン、豆から取れるグアーガム、リーカストビーンガム、海藻からとれるカラギーナンなどがあります。これらはもともと食品から抽出している成分なので、食品としての安全性が認められているものです。

「とろみ剤」はさまざまなメーカーから多くの商品が出ています。種類は少ないですが、最近では街の薬局等でも見かけるようになりました。各社の商品も以前とは違い、性能がよくなっていますので、飲料の違いに関係なく同量で同じ強さのとろみがつく商品がほとんどです。いろいろ試してみて、好みのものを選んでいただければよいと思います。

ただし、どのとろみ剤を選んでも、つけ方のポイントは共通しています。次ページに紹介する2つのポイントを守らなければ、とろみ剤を使う意味がありません。

  • 1
  • 2
  • 次のページへ

あわせて読みたい

カテゴリー一覧

All Aboutサービス・メディア

All About公式SNS
日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
公式SNS一覧
© All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます