電車だけでなく、車での移動にも便利な、
幹線道路近くの立地にスーパー、公共施設も
東京をある程度ご存知の方であれば、環状八号線と交差する高架上にある京王井の頭線の駅のイメージや首都高速道路4号新宿線と中央自動車道のインターチェンジがあることから、高井戸といえば足回りの便が良い場所と思われることでしょう。実際、これら2路線だけでなく、京王井の頭線の北側には並行するように井の頭通り、そこから枝分かれする形で人見街道、そのさらに北側に五日市街道、南側の高速の先には甲州街道が走っており、電車だけでなく、車での移動にも便利な場所です。
ただ、それがために駅前にはスペースがなく、改札を出て階段を下りると目の前は環状八号線。高架下には駅ビルがあるものの、駅の周りには商店街らしいものはありません。環状八号線を挟んだ反対側や環状八号線から五日市街道の間にある旧環状八号線沿いには多少、店はあるものの、率直なところ、日常の用に供するかといえば微妙な感じ。飲食店もごく限られています。
ただ、それを補うように環八、人見街道、井の頭通り沿いなどには大型スーパー、家電店などがあり、買い物が不便ということはありません。このあたりは平坦な場所のため、自転車利用で買い物に出かけるのも容易。もちろん、そのために、どの商業施設も駐輪場、駐車場は用意されています。
それ以外で高井戸という街を印象づけているのは駅前に建つ清掃工場とそれを利用した公共施設。井の頭線ホームから見ると壁面が緑化されており、知らなければなんの施設かは分からないかもしません。ここには清掃工場の熱を利用した温水プール、図書室、集会室、体育室などのある高井戸区民センターがあり、区内を走るコミュニティバスすぎ丸利用で多くの区民が集まります。敷地内には盆踊りなどができる広場、館内にはカフェや保護者が通院などの用事の時やリフレッシュしたい時、子どもを短時間保育してくれるひととき保育施設といった一味違う施設もあり、区民ならいろいろな意味で使えるはずです。
ちなみにこの敷地内には開発時に発見された高井戸東遺跡の碑があり、それによるとこの地には旧石器時代から縄文時代、古墳時代、江戸時代に至る複合遺跡があったのだとか。どの時代にも住みやすい場所だったというわけです。
神田川沿いの桜に
意外に多い生産緑地などの緑
高井戸といえば、駅近くを流れる神田川と川沿いの桜並木も印象的な風景。神田川沿いには遊歩道が整備されており、春の桜に始まり、青葉、紅葉と季節を感じながらの散策が楽しめます。ホームからの花見がもっとも楽しいのも高井戸でしょう。
ホームからの風景でいえば、駅ホーム南側に見える緑の高まりも気になるところ。ここは大正14年に関東大震災の被災老人の援護を目的として、当時の内務省社会局が財団法人として設立した浴風会の病院、複数の老人ホーム等のあるエリアです。広大な敷地とその周辺は圧倒的に緑が多く、敷地内は外部よりひんやり感じられるほど。周辺は区画の大きな一戸建ての住宅街となっています。
ちなみに敷地内にある建物のほとんどは新しいものですが、浴風会本館のみは大正15年に設計された姿を残しており、平成13年には東京都景観条例に基づく東京都選定歴史的建造物の指定を受けています。テレビなどのロケ地としてもしばしば使われているそうで、見たことがあるという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
もうひとつ、この地の緑として印象的なのは農地です。意外に思われるかもしれませんが、お隣世田谷区に比べると3分の1程度ですが、杉並区には農地が残っており、少量多品種の野菜が作られています。しかも、その大半は畑に設置された直売所やJA直売所などで売られており、ご近所に農地があれば直接買うことも可能。区立の幼稚園、小中学校では地元の野菜を給食と使うこともあるそうです。実際、歩いてみると農地の大小はあるものの、ここが本当に東京都23区内だろうかと思われるような風景も。そうしたエリアでは緑の濃さだけでなく、静けさも特筆もので、利便性が高い場所が必ずしも環境の悪い場所ではないと思わせてくれます。
続いて京王井の頭線高井戸の住宅事情を見ていきましょう。