1曲1曲役の人物の気持ちを作り込む
――『KING&QUEEN』のセットリスト拝見しました。あまりのゴージャスさについクラクラと……。
濱田
そうなんですよ! さっき鹿賀(丈史)さんとも「恐ろしいことになりましたね(笑)。」なんて話していたんですけど、打ち合わせの段階で「あー これもいいね」 「この曲もアリかも」なんて候補にしていたナンバーがこれでもか!って位盛り込まれていて、何だか大変なことになってます(笑顔)。
――例えば『ラブ・ネバー・ダイ』のクリスティーヌはヘッドボイスのソプラノですし、『ジキル&ハイド』のルーシーは地声を上げて歌っていく感じですよね。全く曲調も発声法も違うナンバーを同じコンサートの中で歌うって凄く大変じゃないですか?
濱田
その通りです! それも鹿賀さんと「作戦を立てて行かないとね。」って話をしていた所です。技術的な事も勿論大切なんですが、私の場合まず基本にあるのは”その役の気持ちになる”事かな、と思っています。そこから入らないと喉の筋肉が動いてくれないので。今回様々な楽曲を歌わせて頂くんですが、役の気持ちになるという過程がきっちり出来ていないと途中で歌詞も出て来なくなっちゃうんです。ですから役の人物がどういう思いでその曲を歌うのか1曲1曲と徹底的に向き合っています。
――今、1曲1曲と徹底的に向き合うというお話がありましたが、今回は『アナと雪の女王』のエルサや『ジーザス・クライスト=スーパースター』のマリア、『レ・ミゼラブル』のエポニーヌ等出演されていない役のナンバーも歌われますよね。
濱田
そうですね、そこもチャレンジポイントの1つです(笑顔)。『アナと雪の女王』の「Let It Go」はオリジナル版をイディナ・メンゼル(=『Wicked』エルファバのオリジナルキャスト)が歌っている事もあり親しみがある曲ですね。『レ・ミゼラブル』の「オン・マイ・オウン」は実は専門学校時代に課題曲やお稽古曲として数え切れないほど歌っていた曲なんですよ。
他にも『RENT』や『シカゴ』等、未体験の作品からのナンバーも歌いますが、こちらは回替わりで出演して頂くゲストの方と一緒に合わせて行く感じで表現できたらと思います。
――きっと全曲だとは思いつつ、敢えて伺わせて下さい。今回の曲目の中で特に思い入れのあるナンバーと言えば何でしょう?
濱田
(しばらくじっと考えて)……うん、やっぱり全曲ですね。全てのナンバーの色味が全く違うんです。例えばルーシー(『ジキル&ハイド』)のイメージって殆どの方が色付きをイメージすると思うんですが、私にとっての彼女は”真っ白”なんですね。クリスティーヌ(『ラブ・ネバー・ダイ』)は”紫”、エルフィー(『ウィキッド』)は”緑”。
それで、先日スタッフさんから全曲が構成された音源を頂いて改めて聞いてみたんですけど、1番うわああって思ったのが『カルメン』だったんです。
『カルメン』 (写真提供 ホリプロ 撮影・田中亜紀)
濱田
イントロを聞いた時に自分でも予期していなかった生々しい感情がわぁぁって湧き上がって来て驚きました。『カルメン』は私にとって特に思う所、感じる所がとても多かった作品。彼女の置かれた境遇や環境を勉強すればするほど世界中で起きている重い現実も目の当たりにしてしまって。あの作品の世界観とカルメンと言う役がまだ自分の中で思い出になっていないんだなあ、と実感しました。
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