切手収集/切手収集入門

船と郵便の関係がよく分かる、日本郵船歴史博物館!(3ページ目)

横浜の山下公園にほど近い日本郵船歴史博物館。ギリシア風の壮麗な建物は、日本郵船の旧横浜支店として使われていたオフィスビルを昭和11(1936)年の竣工当時の時のままに再現したものです。一歩足を踏み入れれば、豪華客船の華やかなりし時代の雰囲気が味わえ、そして何より海運と郵便事業との深い結びつきについても学ぶことができるスポットでもあります。

板橋 祐己

執筆者:板橋 祐己

切手収集ガイド

博物館周辺の楽しみ方

「日本郵船歴史博物館」と併せて訪れてみたいのは、「神奈川県立歴史博物館」(旧横浜正金銀行本店本館)です。この博物館は同じ神奈川県ということで、鎌倉仏教関連の展示が非常に充実しています。特筆すべきは、30円切手にもなった「円覚寺舎利殿」を等倍で再現した模型があることです。実物の円覚寺舎利殿は国宝のため、遠くから眺めることしかできませんが、模型の舎利殿は自由に出入りできるので、切手収集家なら感動ものです!

円覚寺舎利殿

円覚寺舎利殿30円のコイル切手(参考価格500円)。

外国郵便創業の地・横浜港郵便局

日本郵船歴史博物館と氷川丸のあいだを移動する際には、ぜひ横浜港郵便局にも寄ってみましょう。この郵便局の入口には、大きな文字で「外国郵便創業の局」と入ったプレートが掲げられています。

横浜港郵便局の入口

横浜港郵便局の入口。

明治8(1875)年1月1日に制度として始まった外国郵便なのに、「1月5日」の日付が入っているのは、前島密や各国公使も列席して祝ったという祝賀パーティーの日を基準としているためでしょう。すでに触れましたが、外国郵便創業の直後1月10日に、郵便汽船三菱会社(日本郵船の前身)に横浜上海間の定期航路開設の命令が出されたのは偶然ではありません。

外国郵便創業

外国郵便創業の局のプレート。1975年に設置された。

そして、外国郵便創業80年に当たる昭和30(1955)年に設置された記念ポストにもご注目ください。この郵便ラッパを吹く天使の赤ちゃんも、まもなく還暦(!)を迎えますが、ポスト自体は今でも現役で使用されています。

記念ポスト

横浜港郵便局の記念ポスト。1955年に設置されたもの。

初代神奈川県知事は裁判官で外務長官だった?!

横浜港郵便局の近くには、有名な神奈川県庁本庁(キングの塔)と横浜税関本関(クイーンの塔)があります。他にジャックの塔を合わせて「横浜三塔」と呼ばれて有名ですが、その近くでほとんど人に注目されることなく、ひっそりと佇んでいるのが横浜地方裁判所の脇にある「電信創業の地」の石碑です。

電信創業の石碑

横浜地方裁判所の脇にある電信創業の石碑(写真の中央部)。

実はこの場所こそ、日本の電気通信の父とされる寺島宗則が発案して、明治2年12月(1871年1月)に日本で初めて電報を発信するサービスを提供したところなのです。極端な言い方をすれば「日本におけるIT技術の発祥の地」ともいえる、とても意義深い場所です。

電信創業の石碑

電信創業の石碑。日本電信電話公社が1963年に設置した。

なお寺島宗則は、神奈川裁判所の筆頭判事であり、のちに神奈川県初代知事も兼ねることになります。当時の神奈川裁判所は、条約締結国の公使との折衝を行う機関でもあり、神奈川運用所(横浜税関の前身)も併設されていました。つまり、寺島宗則は神奈川県知事をやりながら、同時に司法と外交のトップを兼ねていたことになります。いくら明治維新の渦中にいたとはいえ、想像を絶する忙しさだったのではないでしょうか。

このように横浜にお出かけの際は、ちょっとマニアックなこだわりを持ったスポットを入れることでメリハリをつけると面白いと思います。さて、秋の行楽シーズンが近づきつつあることもあるので、次回は奥多摩方面の切手スポットをご紹介したいと思います。
  • 前のページへ
  • 1
  • 2
  • 3
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます