1966年(昭和41年)創業の「さぶちゃん」
僕が初めて「さぶちゃん」へ行ったのは1984年(昭和59年)だった。出版社をやめて、神保町にある編集プロダクションでアルバイトをしていた頃だ。「天丼 いもや」や「キッチン・グラン」にはわりとよく行った。その間の路地を入ったところに、いつも行列しているお店があって、それが「さぶちゃん」だった。もっとも「さぶちゃん」という店名を知るのは後になってからだ。ある夏の暑い日、路地の真ん中にある店に行列ができていた。何のお店だろうと見てみると、ラーメン屋。こんなに暑いのに、行列してまでラーメンを食べたいのかなぁ?と思ったのが最初の印象だ。少し涼しくなったある日のお昼すぎ、たまたま前を通りかかったら行列がなかったので、こりゃちょっと食べてみようと店内に入った。
当時、何を食べたのか、どんな味だったのかはまったく覚えていない。それからまもなく編集プロダクションをやめて、フリーになった。そして次に「さぶちゃん」を訪問したのはおよそ10年後。
「さぶちゃん」の前を通ると、雑然と置かれた醤油の缶やダンボールに、赤い暖簾。懐かしいなぁ、昔と何も変わってない。中から店主のさぶちゃんが大きな目でぎょろりと睨む。そして僕は吸い込まれるように店内に入っていった。注文したのは半チャンラーメン。味もそうだがその雰囲気に、ああ、これこれと感じた。
その後も1、2年に一回は訪れている。マスコミにもよく登場する「さぶちゃん」だから、名前だけでも知っているという人はいるかもしれない。店の雰囲気をよく表している動画はこちら。