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躍動感を生む 『HERO』5つの「描く」

『HERO』の面白さはワクワクする躍動感と自由に動き回る登場人物。その背景には、空間の描き方、女性の描き方など『HERO』ならではの「描く」がいくつもあります。

竹本 道子

執筆者:竹本 道子

ドラマガイド

東京地検 城西支部の検事である久利生公平(木村拓哉)が妥協することなく徹底的に事件に向き合い、真実にたどり着く物語『HERO』(毎週月曜21時 フジテレビ系列で放送中)。2001年に大ヒットした作品はさらなる進化を遂げ、日本中をワクワクさせています。

『HERO』の面白さは躍動感と自由に動き回る登場人物。その背景には、空間の描き方をはじめ『HERO』ならではの「描く」がいくつもあります。『HERO』にしかない「描く」を追ってみたいと思います。

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1: 空間を描く

『HERO』というドラマは登場人物の動線を意識した空間を演出している作品です。

例えば各検事室中央に設けられた共有のフリースペース。このスペースを通過しなければ自分が担当する検事室には行けません。自然と誰もが集う空間であり、世間話をしたり、書類の作成をしたり、シビアに意見交換したりするコミュニティーでありながら、新しいアイデアが生まれたり、何かに気付かされたりする空間でもあります。

つまり、ディスカッションしやすい雰囲気を意識した職場づくりを心掛けているオフィスのように、城西支部も仕事の確度を高め、新しい発想が生まれやすい風通しのいい空間づくりに成功していると言えます。

もちろん、人物を自由に動かす仕切りのない空間は、このフリースペース以外にもバー“St.George's Tavern”や給湯室など、いくつもあります。登場人物はどこかに閉じこもらず、のびやかに動き回る。それが『HERO』の躍動感を生んでいます。


2: 扉を描く

扉の音にも注目です

扉の音にも注目です

扉を開閉する。これも『HERO』というドラマにおいて重要な役割を果たしています。

“空間を描く”の項で紹介した城西支部のフリースペースにメンバーが集い、担当の検事室へと引き上げるとき、その扉をどんな風に開けるのか、どんな音を出すのか? 『HERO』ではそんな細かいところも丁寧に描かれます。そっと優しく閉め相手を気遣うバタン、苛立ちのバタン、笑いを誘う全員一斉のバタン、時間差のバタン。バタンの音に心の色が現れているのです。

そんななかで、久利生検事だけは「扉を開け続けよう」と思いながら仕事をしているように感じます。扉を開けることは、閉ざされた空間に風を送り真実を見出すこととも考えているのでしょう。久利生検事が開く扉は作品のテーマの1つと言えそうです。
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