『Dragon Shock』CD化
ガイド:RIKA名義での最後の音源は、当時メトロファルスだったライオン・メリィさんと光永巌さんと作られた『Dragon Shock』(1989年)。でも、当時はFM TOWNSのCD-ROMのみの発売で、聴いた人は限られていたと思います。2007年にジャケも新たにCD化を果たしました。メトロファルスのお二人とはどのような経緯で一緒にやることになったのですか?
RIKA:
『Dragon Shock』を作る前に、お二人とはライヴも演っていたので。ライヴの経緯はもうあんまり覚えてないけど、私がVirgin VSのファンだったのでメリィさんにお願いしてみた…みたいな感じだったかと。で『Dragon Shock』ですが、ゲーム開発会社の事情が「曲を入れたい、でも予算が少ない」。それで私はメリィさんに何とかしてくれと泣きついた次第です。メリィさんのボロアパート(失礼)で深夜まで打ち込み作業に明け暮れたのはいい思い出です。メリィさん的には辛い思い出かもしれませんが。
ガイド:
オープニングの「OVERTURE」はゲームのための楽曲って感じですが、それ以外はRIKAさんの趣味で好き放題にやったと言えば、言い過ぎでしょうか(笑)? やはりタイトル曲「龍的衝撃 - Dragon Shock」はテクノポップど真ん中。ライナーノーツでも書かれていますが、「モンスターへの愛」が伝わります。でも、子供の時からモンスター好きだったのですか?
RIKA:
好き放題です! 怪獣は男兄弟の影響もあって、TVの特撮モノを小さい頃よく見てました。特に好きだったのがジャミラ。ストーリーの意味は大人になるまであまりよくわからなかったけど、子供の頃は「人間が怪獣に変身する」ってシチュだけでゾクゾクきてました。
ガイド:
ジャミラは子供心をくすぐりますね。悲しい宇宙飛行士の物語もジーンと来ますが、頭をシャツの中に入れて、ジャミラ遊びをした子供は多いでしょう。僕もその1人です。
「プロペラ天使」は、アンドロイドの歌。前の曲はゲームへの関連がありましたが、そんな縛りは超えて、さらに趣味の近未来的世界に突入していますね(笑)。「人工無能」が出てきますが、今やiPhoneのSiriまで進化してしまいましたね。
RIKA:
まさかこんな未来が待っていようとは! 長生きはしてみるもんです(笑)。
ガイド:
「G線(ゲエセン)王子」は、ムーンライダーズのメンバーが関わっていないのに、ムーンライダーズのような曲。ムーンライダーズは、RIKAさんの遺伝子になっているんでしょうね。
RIKA:
そういえばテクノポップにハマる前からムーンライダーズ聴いてましたからね。染みついてしまってるのかもです。どこか不思議なアウトロのアレンジはメリィさんが音色の設定を間違えてできた偶然の産物。
ガイド:
「Girls be ambitious!」は、その後の日本のkawaiiカルチャーの先駆けのような曲になっていますね。僕はこの部分はジェンダー論的にとても面白い分野だと思います。特に欧米では、kawaiiというのは女性に対する制限、悪く言えば蔑視とまで取られることもあります。しかし、日本では、あくまでも多数派としてですが…kawaiiを女性の特権、さらに正義とまで考えます。あ、難しく考えすぎましたかね?
RIKA:
まさしく先見の明ですね! と、誉められて調子に乗ってみました。なるほど、kawaiiカルチャーってのは日本独自。大正時代の乙女達が夢二の絵に熱狂した頃から脈々と受け継がれている少女文化を、私も愛しています。
ガイド:
「ガーネット・ガーネット」のタイトルは、森雅之さんの漫画『ガーネット』からとあります。僕は森雅之さんのことを知らないのですが、RIKAさん、教えてください。ちなみにこの歌は当時の気持ちを表したものなんでしょうか? 僕にはそう聴こえてしまいます。
RIKA:
森雅之さんの漫画はたぶん一生のうちで一番読み返しています。絵柄はシンプルだけど可愛くて、物語は詩的だけど日常的、優しいけど時に切なくて…とにかくとても愛らしい漫画です。で、歌詞は…正直、当時どういう思いで書いたのかあまり覚えてません(笑)。ただ「届かない祈り、叶わない夢」という概念は他の唄にも何度か繰り返し出てくるので、届かなかった祈りを弔ってやるのが一種のライフワーク的な何かなのかもしれません。後ろ向きなライフワーク。