秋のG1戦線に向けた、重要な戦い
「札幌記念」
JRAにおけるメインの競馬場は、中山・東京・京都・阪神の四つ。ただし夏場は、この競馬場での開催をお休みし、「ローカル」といわれる脇役的な競馬場を中心にレースを行います。8月の場合は、新潟、小倉、そして札幌がそれにあたりますね。競馬界にとっては、トップシーズンではない夏場。だからといって甘く見てはいけません。競馬の面白さは、どんな時期のレースでもそれが数カ月後のG1、つまり頂上決戦につながっていること。夏競馬で勢いを付けることでそのまま秋のG1を制す。あるいは、夏競馬のレースぶりで「この馬、秋のG1で面白そうだな」とざわめき立つ。このつながりこそが競馬の面白さなのです。だからこそ、夏競馬は見逃せません。
そして、その面白さを存分に味わえるレースが8月に行われます。G2札幌記念(芝2000m、札幌競馬場)です。
レースの最高位はG1で、その次に位置するのがG2。夏競馬においては、唯一行われるG2レースが札幌記念ですから、各陣営が本気で狙いに来る一戦といえます。しかしそれよりも、この札幌記念を制した馬の多くは、その後のG1で活躍していることが重要。あるいは、すでにG1を勝っている実績馬が、このレースをステップに秋のG1へと向かうケースも見られます。つまり、秋のG1戦線を占う上で見逃せないレースと言えるのです。
1996年のマーベラスサンデーや2010年のアーネストリーなど、後にG1を制す馬たちの飛躍の過程となった年は多数。あるいは、1997年・1998年と札幌記念を連覇した女傑エアグルーヴ。秋に向けて、いつもの先行策とは違う後方からのレーススタイルで勝利をもぎ取った1999年のセイウンスカイなど、G1を多数勝利している馬が強さを見せた年もあります。
夏に行われる唯一のG2レース。その勝利の行方を見守るだけでなく、この結果が秋のG1にどうつながるかを考えるのが、札幌記念の一番の楽しみ方と言えるでしょう。
さらに札幌記念は、稀に「世界最高峰のレース」とされるフランスの凱旋門賞(芝2400m、ロンシャン競馬場)へのステップとなることも。2014年も、G1を5勝しているゴールドシップと、G1桜花賞を制したハープスターが出走を表明。渡仏前の前哨戦として登場する予定です。
札幌記念の勝利から2ヶ月後、一躍G1馬の仲間入り
2011年の札幌記念を制したトーセンジョーダン。同馬もまた、この舞台での勝利を糧にして秋に大きな飛躍を遂げた馬でした。トーセンジョーダンは早くから素質を見せながら、足元の弱さで休養。出世は遅れたものの、元々の能力はやはり高く、復帰後は徐々に活躍。そして2011年の札幌記念を制します。
2011札幌記念のレース映像(トーセンジョーダンはピンク帽の13番)
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着差はわずかでしたが、内容はトーセンジョーダンが力でねじ伏せた“一枚上”のレース。さらに細かく言えば、札幌競馬場は小回りのため、大外からのスタートとなった同馬には少なからず苦しい展開でした。それでもきっちり勝つところに、確かな能力の高さと成長があったのです。
その証拠に、札幌記念から約2ヶ月後、G1天皇賞・秋にてトーセンジョーダンは大仕事をやってのけます。1分56秒1という驚異的なレコード決着を、伏兵ながら制したのでした。
2011天皇賞・秋のレース映像(トーセンジョーダンは緑帽の12番)
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夏の札幌で、外枠スタートから他馬をねじ伏せた競馬。その経験が、同じ距離の大一番に生きたのかもしれません。なおトーセンジョーダンは、続くG1ジャパンカップ(芝2400m、東京競馬場)でも2着と好走。G1勝利がフロックではないことを証明しました。