『HERO』初回の視聴率は26.5%。第2話で19%台に落としたものの、3話ではまた20%台に乗り、4話で少し落としたとは言え今季の民放ドラマの中ではぶっちぎりの第1位。変わって『若者たち 2014』初回の視聴率は12.7%とまずまずだったものの、第2話では7.8%と急落。その後も2桁の大台に乗れず数字的には苦戦中です。
”リアル”がブレる?『若者たち 2014』
若者たち 2014の舞台は東京の東側
三男・陽(柄本佑)は大学で劇団を主宰。四男・旦(野村周)を妊娠詐欺で騙そうとした予備校生・香澄(橋本愛)に「良かったら遊びに来なよ、君、いい目をしてるよ。」と名刺を渡し、稽古場に来た香澄が『飛龍伝』の台本を読むと、周囲のメンバーも一瞬で彼女に惹き込まれいつの間にか大拍手……ガラスの仮面か!昭和か!
……と、完全ネタドラマとしてツッコみながら観るにはワーキングプア、人の死、贖罪……とドラマ中で扱われる題材も若干重め。最初のトーンで小劇場モードの熱く濃い物語が展開するのかと思いきや、途中で急にリアリズム演劇調のシチュエーションが顔を覗かせ物語の色味が変わってしまうと、観ている側はその変わり様に戸惑ってしまうのかもしれません。第4話のクライマックスシーン……陽が代表を務める劇団の『飛龍伝』公演シーンには実際につかこうへい氏・作の舞台に参加していたメンバーが多数出演。あの場面の演出は舞台ファンにはグっと来つつも、普段演劇を観ない視聴者には少し唐突に映った感もありました。(医師役で出演中の”つかこうへい最後の愛弟子”馬場徹さんが飛び入り参加できたら良かった……かも?)
『HERO』の絶妙な世界観
HERO 城西支部のロケ場所は銀行
『HERO』も決してリアルな世界観を描いている訳ではないのです。被疑者が取調室に入ってくると席から立って挨拶をし、何度も現場に足を運んで小さな穴から事件の本質を掴み解決していくデニム着用の茶髪検事……イヤイヤ、こんな検事、日本中のドコを探してもいませんって。……と心の中でツッコミを入れつつ、つい見入ってしまうのは”最後は必ずやってくれる”と言う久利生検事への水戸黄門的期待感と腕のある俳優陣のクスっと笑える小ネタ攻撃へのワクワク感。
4話で”京都地検の女”として前シーズンのレギュラーだった大塚寧々さんがゲスト出演し、帯同する事務官は温水洋一さん。給湯室での小日向VS温水の遣り取りは演劇ファンならずともクスっと笑えるものでしたし(2人は2002年の三谷幸喜さん作・演出『彦馬がゆく』で共演)、第1回目のオンエアでは同じく前シーズンのレギュラーだった勝村政信さんが中継画面に登場。毎回どこかに挟まれる八嶋さん、正名さん、小日向さんの事務官トリオの掛け合いはまるで舞台の一場面を見ているかの様。田中要次マスターの「あるよ」も健在ですし、大きな流れをしっかり作った上で視聴者を遊ばせてくれる構成にヤラれます。また現時点では噂話の中でしか出てこない雨宮役の松たか子さんの特別出演や、角野卓造さん演じる牛丸次席検事の娘役としてハリセンボンの近藤春菜さんの出演も噂されており目が離せません。
舞台もドラマも『脚本』(戯曲)、『演出』 『出演者』が作品にとって大きな3本の柱である事は同じですが、『HERO』と『若者たち 2014』を比べると今の時点で三本柱のバランスは『HERO』の方がリードしているように感じます。ただ『若者たち 2014』もキャスト陣の魅力と実力は誰もが認める所ですので今後の展開に注目です。