ココロが愉快に。いま、最も完成度の高いスポーツカー
はたしてM235iの6MTは、運転する歓びに満ちていた。乗って楽しいという点で、ATよりも、やはり数段上だと思う。ウデとアシを駆使してのマニュアル操作は、クルマを運転する歓びの基本要素だったと、改めて思い知った。とにかく、A(アクセル)B(ブレーキ)C(クラッチ)ペダルの踏力バランスがとてもいい。どれを踏んでも同じ感覚(厳密には違うはずだけど)で、妙なひっかかりや違和感もまるでなし。
アクセルペダルを踏みこんだとき、同時に盛り上がるエンジンの音と力、ブレーキペダルを踏むとはじまる安心感に満ちた制動力、電動ステアリングのフィールといったもの、すべてが見事に連携、車体そのものの前後重量バランスの良さと相まって、相当に気持ちいい。あまりにリズムよく走ってくれるから、運転していてカラダが歓ぶ、というか、ココロが愉快になっていく。
スポーツモードで聞く、エンジンまわりのサウンドは、残響もかなりワイルドで、ときにうるさく感じられるほどであったが、音と力と右足の見事に連動にMらしい計算された一体感があって、思わず笑みがこぼれた。
もちろん、M5&6用のV8ターボエンジンのようにエキセントリックなパフォーマンスではないし、ましてや一世代前の自然吸気エンジンのようなエモーショナルフィールにも乏しい。けれども、コンパクトスポーツの範疇においては、これで十二分と納得できるチューニングレベルである。
ハンドリングもMらしかった。リニアなクイックさが、次のコーナーはもっと攻めてみよう、という気にさせる。意外にも、スポーツ+でのライドコンフォートが、実用上もリーズナブルなレベルであった。コンフォートモードやエコプロモードの方が、逆に路面からの入力をこなしきれず、乗り心地が悪いと思えてしまうほどだった。
都会派のスポーツカー。Mパフォーマンスを“なんちゃってM”などと侮ってはいけない。8ATももちろん、6MTならなおさら、いま、最も完成度の高いスポーツモデルである。