スクーターの概念を覆すマシン TMAX530
「これ一台あれば、他のバイクはいらないんじゃない?」先日ヤマハからTMAX530の広報車をお借りした際に、この業界の先輩が試乗してくださり、バイクを降りた直後に私に言いました。一般的な車体の区別で言えば、フォルツァやマジェスティ、スカイウェイブなどが属するビッグスクーターにジャンル分けされる車両ですが、TMAXは他の車種とは少し違います。TMAXはオートマチックスポーツコミューターというコンセプトを背負いこの世に誕生しました。
コミューターとは気軽に町乗りで使う足という意味があり、直訳すればスポーツ走行が出来るオートマチックの町乗り車という事になります。最近は他のビッグスクーターも走行性能が上がってきており、フォルツァやマジェスティには走行モードを選択する機能が備わっていますが、スポーツモードを選択すれば、アクセルのレスポンスが良くなり、エンジンを高回転まで使うモードになり、充分にスポーツ走行を楽しむことが出来ます。
しかし、TMAX530はそれら一般的なビッグスクーターには備えられていない特別な機構が盛り込まれ、全く次元の違う乗り味となっています。
「これ一台あれば、他のバイクはいらないんじゃない?」と発言した先輩の意図とは?今回も一週間通勤で使用して試乗インプレッションをお届けします。
今も昔もオンリーワン
TMAXが始めて登場したのは2001年です。当時の排気量は499ccでした。今のTMAXは530ccですから排気量は今のモデルに比べて小さいエンジンを搭載していました。ビッグスクーターのブームの際も、一部のスポーツバイクの愛好家達はビッグスクーターに対して否定的な意見を持っていましたが、TMAXだけは一目置かれるバイクでした。499ccのエンジンユニットは40ps/7000rpm。同じヤマハのマルチエンジンを搭載するXJR400Rは53ps/11000rpm。馬力だけ見れば、400ccのマルチエンジンには勝てません。しかし、トルクを見てみると、XJR400Rが3.6kg.m/9500rpmなのに対して、TMAXは4.5kg.m/5500rpmを発生させています。トルクフルな2気筒エンジンは、加速時に400ccの4気筒エンジンに引けをとりません。スポーツバイク乗りがTMAXを認める理由の一つと言えます。