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7月の注目レース ~年に一度のシリーズが開幕~

7月は、競馬では珍しいポイント制のシリーズ企画が行われるシーズン。それらのシリーズ戦の紹介とともに、カギとなる「七夕賞」や「函館記念」、「CBC賞」などのレースを紹介します。※レースの情報は、すべて2014年6月末時点のものです。

河合 力

執筆者:河合 力

競馬ガイド

シリーズ戦の攻防が見られる夏競馬

JRAのG1レースがない7月~8月は、実績馬にとって「夏休み」の時期。ほとんどの有力馬たちが休養に充てます。ただし、その間も競馬は行われ、秋以降のビッグレースを目指す馬たちが、夏の間に飛躍を誓って各レースに参戦するのです。

そんななか、JRAではこの時期ならではの変わった企画を行います。変わった企画とは、競走馬たちが指定された数レースでポイントを稼ぎ、その合計でチャンピオンを決めるシリーズ戦です。短期間のF1のような形ですね。

夏の中距離王を決める「サマー2000シリーズ」

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2013年の「サマー2000シリーズ」初戦、七夕賞を制したマイネルラクリマ(写真 JRA)

競馬の芝レースで「中距離」といえば、2000m。この距離でのG1レースも年間にいくつか行われます。そして夏競馬では、その2000mにおけるシリーズ戦が開幕。それが「サマー2000シリーズ」です。

サマー2000シリーズ (2014年)
7月:G3七夕賞 (芝 2000m、福島競馬場)
7月:G3函館記念 (芝2000m、函館競馬場)
8月:G3小倉記念 (芝2000m、小倉競馬場)
8月:G2 札幌記念 (芝2000m、札幌競馬場)
9月:G3新潟記念 (芝 2000m、新潟競馬場)

2006年から始まったこのシリーズでは、全国各地で7月~9月に行われる全5戦の芝2000mレースを対象に、着順ごとのポイントで総合順位を決めていきます。ポイントは以下の通り。

レースのランクがG2の場合
1着=12pt
2着=6pt
3着=5pt
4着=4 pt
5着=3 pt
6着以下=1 pt

レースのランクがG3の場合
1着=10 pt
2着=5pt
3着=4pt
4着=3 pt
5着=2 pt
6着以下=1 pt

シリーズに優勝した馬の馬主には3200万円、厩舎関係者(その馬を管理するスタッフ)には800万円が交付されますから、戦いは気温以上に熱くなるといっていいでしょう。

7月は、サマー2000シリーズの前半戦となるG3七夕賞(芝2000m、福島競馬場)と、G3函館記念(芝2000m、函館競馬場)を施行。このどちらかで上位に入って、まずはポイント争いでリードを取れるかがシリーズの行方を握ります。

ただし競走馬は、月に1回ほどのペースでレースに出るのが一般的ですから、全5戦すべてに参戦できるわけではありません。たとえば七夕賞の翌週に函館記念は行われますが、両方出る馬はほとんどいないはずです。となると、全5戦の中でどのレースに照準を合わせるか、相手関係や馬の状態を見ながらどんな選択をするかも、シリーズ制覇のカギとなります。

過去のシリーズを見ると、5戦中2勝を挙げれば、チャンピオンはほぼ確実。1勝の場合でも、他に出たレースで優勝争いをしているとチャンピオンになれる可能性もあります。いずれにせよ、出走したシリーズ内のレースで確実に好走する安定感が求められると言えるでしょう。

函館記念の勝利で、中距離への適性を完全証明

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2013年の「サマー2000シリーズ」王者となったトウケイヘイロー(写真 JRA)

2013年の函館記念を制し、8月の札幌記念も連勝して見事に「サマー2000シリーズ」チャンピオンとなったトウケイヘイロー。スタートから先頭を奪うと、遅過ぎず早過ぎずの絶妙なペースを刻んで逃げる同馬ですが、過去の姿を見ていた人からすると、2000mの中距離でこれほどの強さを発揮するのは、ただただ意外でした。

それもそのはず。トウケイヘイローは2013年の5月まで、1600m以下の短距離を走っていた馬。そしてその短距離で、騎手の制止を振り切ってガンガン走りたいヤンチャさを見せていました。

しかし2013年6月、目標の短距離レースに出られず、かわりに出走したG3鳴尾記念(芝2000m、阪神競馬場)でまさかの快勝。普通、距離が延びるとレース中のペースが遅くなるため、トウケイヘイローのようなガンガン走りたいタイプの馬は暴走気味になりバテてしまうのですが、なぜかこの馬は、むしろ距離が延びて落ち着くようになったのです。

函館記念は、先述の鳴尾記念に続いて出走したレース。ここでもスタートから先手を取りますが、短距離を走っていた頃のように馬がリキんで消耗するということはありません。コンビを組んだ武豊騎手の指示に従い、遅くも早くもない、絶妙なペースを刻んで逃げ切ってしまったのです。

2013年函館記念のレース映像(トウケイヘイローは青帽の8番)

武豊騎手によると、「2000mのような、コーナー四つのレースだとリラックスする」とのこと。JRAの競馬では、1600m以下のレースの場合、コースを半周するのが普通。つまり、コーナーは二つ。それが2000mになると、競馬場によっては1周ぐるっと回る形、つまりコーナーを四つ回ることになります。トウケイヘイローは、コーナーを回るときに気が紛れるのかリラックスするため、1周回る2000mが合っていると分析したのでした。

トウケイヘイローはそれから海外の2000m戦にも遠征し好走。今や2000mのスペシャリストとして活躍しています。

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