お年寄りの身体は変化している

高齢者の1日

年齢を重ねるごとに人間の身体は大きく変化していきます。身体の変化に伴って好まれる食事や用意すべき食事が変わります。今日はお年寄りの身体について考えてみます。

「最初は4本足、次に2本足になって、最後に3本足になる動物は何だ? 」

子供の頃、誰もが1度は聞いたことがあるなぞなぞだと思います。もちろん、答えは「人間」ですね。このように、人間の身体は年齢とともに変化をしていきます。人生のスタートラインに立ったばかりの赤ちゃんはほぼ横並びに成長していきます。そのため、さまざまな育児本が出版され、真面目なお母さんたちは「うちの子、本に書いてあることができない」とか「隣の子ができることがまだできない」などと悩んだりします。しかし、子供の成長には「個人差」があり、5歳になっても歩けない等、極端である場合を除いて、実際には問題なく大人になっていくことがほとんどです。

一方、お年寄りの個人差は成長の個人差に加えて、今までの人生を反映しているために、同じ年齢なのに見かけは10歳以上離れているように見える場合もあります。ただ、加齢による身体の変化は誰にでも起こることであり、注意すべきなのは齢を重ねれば重ねるほど個人差が大きくなるので、「○○歳になったから△△になる」と言い切れるものではないということです。そのため一人ずつの身体の状態に合わせて食事を工夫する必要があります。そこで今回は、加齢に伴う身体の変化を「食べること」を中心に説明します。

「食べること」に関連する9つの身体の変化

まず、「食べること」に関連する9つの身体の変化を挙げます。

  1. 味を感じにくくなる
  2. 喉が渇いたことを感じにくくなる
  3. 食欲が低下する
  4. 噛む力(咀嚼)が弱くなる
  5. 飲み込む力(嚥下障害)が弱くなる
  6. だ液の分泌量が減る
  7. 胃液の分泌量が減る
  8. 膵液の分泌量が減る
  9. 腸の運動能力が低下する

それぞれの理由を、以下に簡単にご説明します。

「味を感じにくくなる」…味は「舌」にある「味蕾(みらい)」という器官で感じます。年齢を重ねるごとに「味蕾」が磨耗して味を感じにくくなります。特に甘味と塩味が感じにくくなるようで、濃い味付を好むようになります。

「喉が渇いたことを感じにくくなる」…人間の身体の60~70%は水分でできていますが、年齢を重ねるごとに水分の割合は減っていきます。そのため、身体が乾燥して皮膚にしわができたりします。さらに、お年寄りはもともとの身体が乾いているため、乾燥に気づきにくくなっており、脱水症状を起こしやすくなります。

「食欲が低下する」…運動量が低下することで筋肉量が減ります。その分、基礎代謝も減るので、消費するエネルギー量が全体的に減ります。そのためおなかがすいたと感じなくなるようです。それに加えて、お薬等の副作用で食欲が低下してしまうこともあります。もちろん、食欲が低下しても、消費エネルギーが減っているので帳尻が取れる程度に食べていれば問題ありませんが、食べる量が極端に減り、消費エネルギーが摂取エネルギーを上回ってしまう、いわゆる「低栄養」が高齢者の大きな問題のひとつとなっています。

「噛む力(咀嚼)が弱くなる」…言わずもがな、「歯」が抜ける、あごの力が低下するなどが原因です。

「飲み込む力(嚥下障害)が弱くなる」「高齢者は食べるのも命がけ…誤嚥性肺炎の原因と対処法」で説明したとおり、咽頭蓋(こうとうがい)の筋肉が弱まり、しっかり蓋をすることができなくなることが原因です。

「だ液・胃液・膵液の分泌量が減る」…食欲が低下することとリンクしていますが、消化液の準備ができなければおなかがすいたとは感じません。だ液にはでんぷんの消化酵素が含まれており、口腔内でこの消化酵素が十分に働かないまま飲み込んでしまうと、胃に負担がかかります。胃液・膵液にはたんぱく質や脂質の消化酵素が含まれているので、胃の働きが鈍いと消化不良や下痢の原因になります。

「腸の運動能力が低下する」…腸の動きが鈍くなると、前に食べたものの消化が終わる前に、次の食事の時間になってしまうので、便秘になりやすくなってしまいます。

これらの変化は順番に起こるものではなく、個人によって変化の仕方が異なります。

食事は可能な限り自力で……。

手などの麻痺や拘縮(関節の動く範囲が狭くなった状態)によって動きが鈍くなってしまった場合でも、「自分で食べる」ことが重要です。「『食べる動作のメカニズム』と食事の関係」でもご紹介した食事を目で見て、手で口に運び……という一連の動作は脳を活性化します。

私は病院でも、自力で食べられるのに食べさせてもらえるのを待っている患者様には、心を鬼にして「自分でできなくなっちゃったら困りますよね? 」とスプーンを持っていただきます。患者様がやっとスプーンを持って、食べ始めようとした瞬間に、無言で私を押しのけて患者様のスプーンを取り上げ、口の中に食べ物を詰め込む介護士もいます。患者様の見ている前で文句を言うことはしませんが、正直、この行動は感心しません。「どれを食べようか?」と迷い、箸を伸ばすという、食事の楽しみの一部を奪ってしまう行為だからです。

とはいえ、身体機能が衰えたお年寄りにとって食事は重労働です。食事中に疲れてしまい、手が止まってしまう場合があります。手がとまる理由は、すでにおなかがいっぱいのこともありますが、まだ食べたいのだけれど、手が疲れて動かせないだけという場合も多いものです。その場合は食事を口に運ぶお手伝いをして差し上げてください。

くれぐれも、ご本人に食事をするための機能が残っているのであれば、もう一口だけでもご自分で口に運んでいただくよう声をかけることを忘れずに。実際に口に運ぶことができるかどうかは問題ではありません。そういう「気持ち」をご本人に持っていただくことが大切です。

このように、自分で食べていただくために、役に立つのが「自助食器」です。自助食器は動きにくくなった手でも使いやすいように設計された食器です。皿やコップのほかに箸やスプーンもあります。介護ショップ等に販売されているので、身体に合ったものを探してみるとよいでしょう。




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