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「青天の霹靂」は笑って泣けるニューウェイブ作品(2ページ目)

昔から日本には、喜劇、悲劇に加えて「笑って泣ける」というジャンルがありました。人情劇と呼ばれたりしますが、はっきり言ってパターンは決まってました。そのジャンルに果敢に挑み、見事に成功を収めた作品。それが劇団ひとり監督の「青天の霹靂」なのです。

広川 峯啓

執筆者:広川 峯啓

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笑いと悲しみの絶妙なブレンド

そんな日本映画の中で新機軸を打ち出したのが、劇団ひとり監督の「青天の霹靂」でした。一見して有りがちな映画(いわゆる難病もの)と思われるかもしれませんが、そこにはいくつもの新たな工夫が凝らされていました。

※ここから映画の内容に触れています


まず冒頭のシーンですが、大泉洋扮する世の中に順応できていない主人公の惨めな様子が、これでもかとばかり描かれます。しかし、その一つ一つを取り上げてみると、そこまで悲惨な出来事という訳でもなく、単発で起きたことであれば、後から笑い話にできるレベルでしょう。

ちょっとした笑える不幸が立て続けに起きることで、ボディブローのようにダメージを蓄積して、これまでの人生をすべて否定したくなるほどの絶望感を味わってしまう。この笑いと悲しみのブレンドは、従来の日本映画になかったアイデアだと思います。

あえて本線から外れた笑いを

その後、主人公が昭和の時代にタイムスリップしてからは、いわゆる人間ドラマが中心となって展開し、ストーリーの中にギャグのシーンはほとんどない。ではどこで笑うのかと言うと、彼が仕事をする場面です。主人公の職業はマジシャンで、昭和に飛ばされてからは相方とコメディマジックを演じることになる。その面白さと現実の悲しさがリンクすることで、新たな感動が生み出されたのでした。

難病ものと芸人の世界を描いた映画は、過去にもいくつかありましたが、どれも本気で観客を笑わせようとしていなかったように思います。そうすることで、悲劇の部分が損なわれると判断したのかもしれませんが、「青天の霹靂」がそうではないことを示しました。これからは、新たな枠組みによる笑って泣ける作品が続出することを期待したいです。
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