バリスタとしてカウンターに立つ前に
オーストラリア出身のポール・バセット氏は、2003年度のワールド バリスタ チャンピオンシップにおいて世界最年少の25歳で優勝。シドニーを拠点として、たえず進化しながら活動を続けています。彼がプロデュースした、極上のコーヒーを提供する東京のエスプレッソカフェが「ポール バセット」。鈴木清和さんはポール・バセット氏から直接指導を受け、チーフバリスタとして後進の指導にあたっています。
バリスタ修業はまず「ひたすら基礎連」と、鈴木さんからポール バセット式トレーニングを受けた佐々木さん。最初は、正確に同じ動作を繰り返せることが要求されます。
「たとえ1杯のおいしいコーヒーが作れたとしても、他の99杯がうまく作れなければ失格です。プロであれば80%のおいしさを100杯続けて作れることのほうが重要。だから、ぶれずに同じ動作ができるように訓練します」
そのために必要なのは、細かな動きのひとつひとつを敏感に意識すること。たとえば、エスプレッソボタンを押す指を決める。何歩で移動するかも決める。ポルターフィルターをノックボックスのバーで叩く回数も厳密に3回と決められています。もし、うっかり4回叩いてしまったら?
「"Again."と言われてやり直しです」と鈴木さん。
「最初はロボットのように動けと指示されます。同量の豆を使用して同じキロ数でタンピングすれば、ぶれずに同じ味が出るはずだが、人間が不正確だと毎回違った味になってしまう。だから一連の動きがロボットのように正確におこなえるようになって初めて、次のステップとして人間にしかできない高度な技を磨いて、さらなるおいしいエスプレッソを目指していく。サーフィンなどのスポーツにも通じるものだと思います」
ポール バセットのバリスタ本試験は、10分間でカフェラテ、カプチーノ、エスプレッソ、アメリカーノをおいしく作ること。このカウンターに立つバリスタは、自転車に乗ることを体で覚えるように、エスプレッソ抽出の基本動作を体に沁みこませているのです。
コーヒーの世界をより楽しむために、気軽にセミナーへ
鈴木バリスタが講師をつとめる土曜日午前10時からのセミナーには、コーヒーやエスプレッソに興味を持つ女性たちが積極的に参加しています。苦味愛好派の人々もケニアやエチオピアなどのフルーティーな酸味をもつコーヒーの魅力に触れ、酸味好きに変身するという体験をしているそう。「とても面白い内容ですので、コーヒーってなんだろう、どう味わったらいいんだろうという方もぜひ参加して、お気軽にご質問ください」
日本に新しいコーヒーの世界をひろめると同時に、東京はおいしいコーヒーが飲める都市だと世界に発信したい、と両バリスタ。今回のチャンピオンシップでの素晴らしい活躍で、それが一歩前進したことは間違いありません。ポール バセットのメニューは次ページでどうぞ。