絶品の手打ち麺! 中国系のマレーシア料理、パンミー/板麺
パンミースープ。煮干しでとった、ふくよかなだしのスープヌードル
パンミーは中国系の料理です。看板に漢字で「板麺」と書いてあるお店を探しましょう。パンミーの基本の味は、煮干しのだしが効いた透明のスープ麺。また、甘辛のタレを絡めたドライパンミー、じわっと辛いチリパンミーなど、アレンジバージョンも人気です。
パンミーの歴史
ブキビンタンにあるパンミー専門店。昼14時ごろには営業終了
専門店が生麺にこだわるのは、パンミーの発端が家庭料理にあるからです。実際、知人のマレーシア人は「パンミーは家で食べる料理」と言います。彼のお母さんはパンミーをよく作ってくれたそうで、とくに幼い頃は、外でパンミーを食べることは無かったとか。日本でいえば、山梨県のほうとうや熊本県のだご汁のように、家庭で作る気取らない麺料理なのです。
パンミーの種類
幅広のパンミー麺。塗り箸では持ち上げにくい滑らかな麺
スープやタレのバリエーションも大変豊富です。激辛の麻辣パンミー、中国漢方を煮込んだハーバルパンミー、酸味と辛味が同時にグワッと襲ってくるアッサムパンミー。さらに、麺にカボチャやホウレン草を練り込んだりカラフルなパンミー麺など。
こんなにも種類豊富なパンミーですが、どのパンミーにも共通している食材が3つあります。1つは煮干し。マレーシア語でイカンビリスといいます。スープのだしや、カリカリに揚げて具に。2つめは椎茸。うま味をプラスするために必須。3つめはサユマニスという葉っぱ。モロヘイヤのような形状ながら、繊維質が多くて、歯ごたえはまるで野草。そこら辺で生えている単なる雑草では?と不安になるのですが、これがスープに甘みを加えるため、パンミーにはマスト。
この3つがパンミーに欠かせない食材。別の言い方をすれば、この3つさえあれば、それがどんな姿であれ、パンミーなのです。
それでは、パンミーを4種類、紹介します。
パンミーの基本系。パンミースープ
パンミースープ。麺はちぎり麺を選択。別皿で、サンバルソースか唐辛子醤油が出てくるので、スープに少しずつ加えながら味の変化を楽しむ
オリジナルのパンミーです。だしのきいた関西のうどんのようで、体も心もほっこり温まります。具は、豚のそぼろ肉、香ばしい揚げ玉ねぎ、そして、カリカリに揚げたイカンビリス(煮干し)。このイカンビリスのほろ苦さが、モチモチ麺に合う! 追加で卵をトッピングしてもおいしい。
パンミースープは、しこしこの平打ち麺もいいのですが、おすすめは、写真のようなもっちりとした食感のちぎり麺。クアランプールなら、広東語で「ミッ」と注文します。パンミーの麺はツルツルしているので、塗り箸では持ちにくく、レンゲですくって食べましょう。
さっぱり味わいたいなら、パンミードライ
パンミードライ。こちらはパビリオン地下のフードコートの料理。コリコリとした木耳が入っているのがこの店の特徴
パンミーに欠かせないサユマニス(緑の葉)の入ったスープは別皿で提供。麺が乾いてくっついてしまったら、このスープを麺にまわしかけて、ほぐしながら食べるのが現地流。
爆発的ヒットを飛ばした大人気のチリパンミー
チリパンミー。ドライパンミーに特製のチリタレをのせて。コクのある辛味にハマる人が続出
お店特製のチリタレ。唐辛子、玉葱、豚の脂身など色んな食材が入っている。お店ごとに自家製タレにこだわりがある
基本はドライ麺です。そこにお店特製のチリタレを好みの量、加えます。小さじ1杯ぐらいが私にはちょうどいい辛味。
このチリタレがすごい。乾燥唐辛子、玉葱、生姜、ラー油、豚の脂など、10種以上の材料を長時間かけて火入れ。うまみたっぷりで、コクのある辛味がたまりません。日本で一世風靡をした“食べるラー油”に似ています。ちなみに、このチリタレ、お店の常連だった友人が頼み込んで譲ってもらい家でインスタントラーメンに追加。すると、すばらしく激ウマだったそうです!
パンミーは、日本人が思い描く、いわゆる香辛料の効いたアジア料理とは違います。とくにスープ麺は、和食に通じるやさしいだしの味。これもたしかにマレーシアの味なのです。マレーシア人と日本人の味覚の共通点を実感できる料理ともいえます。