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映画スターになったプロレスラー 後編

これまでの前・中編では海外で映画スターになったプロレスラーにスポットを当ててきましたが、後編では日本の映画スターになったプロレスラーを紹介します。国民的英雄だった力道山は数多くの映画に出演していますが、主演として話題作に出演したのはアントニオ猪木と武藤敬司です。彼らの映画スターとしての魅力に迫りましょう。

小佐野 景浩

執筆者:小佐野 景浩

プロレスガイド

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『光る女』で主演を務めた武藤敬司

これまでの前中編では海外で映画スターになったプロレスラーにスポットを当ててきましたが、後編では日本の映画スターになったプロレスラーを紹介します。日本のプロレスラーで国民的英雄だったのは力道山。当然、力道山は数多くの映画に出演しました。

デビューは鶴田浩二主演の『薔薇と拳銃』(1953年公開)。その後は松島トモ子と共演した『力道山の鉄腕巨人』、美空ひばりが本人役で出演している『力道山物語 怒涛の男』、森繁久彌。岸恵子、宮城まり子、江利チエミら錚々たる俳優が出演した『力道山 男の魂』、『怒れ力道山』、力士上がりの元二等兵がプロレスラーになって成功する『純情部隊』、プロレスラーとしてではなく純粋にアクションに挑んだ『激闘』で主演を務めました。

力道山関連の映画では、力道山が朝鮮半島出身であるという側面にスポットを当てて、韓国で04年12月、日本では06年3月に公開された日韓共同制作の『力道山』があります。この作品には力道山をプロレスに誘ったとされるハロルド坂田役に武藤敬司、力道山と一緒にプロレスラーになった遠藤幸吉役に秋山準、その他にも豊登=モハメドヨネ、シャープ兄弟=マイク・バートン&ジム・スティールが出演しています。

その他、チョイ役を含めると数多くのプロレスラーが映画に出演していますが、主役は限られます。異色作品は西村修が難病を克服して、いかレスラーとして再生した主人公を演じる『いかレスラー』(04年公開)。スポ根コメディ映画と表現したらいいのでしょうか。

アントニオ猪木の実人生と重なる『ACACIA』

中編ではアントニオ猪木がハリウッド映画に出演したことを紹介しましたが、日本では主演を務めています。それが10年10月に公開された『ACACIA』(アカシア)。辻仁成が自身の小説『アカシアの花の咲き出す頃―ACACIA-』を映画化したもので、脚本と監督も務めた話題作です。あまり詳しく書いてしまうと、ネタバレになってしまいますが、猪木の役は、かつて幼い息子を失った初老の元覆面レスラーの大魔神。息子に十分な愛情を注げなかった後悔を引きずりつつ、老人ばかりのさびれた団地の用心棒を務めていたある日、孤独な少年タクロウ出会って…という、かなり渋い設定ですが、これが猪木の実人生と重なる部分があり、昔からの猪木ファンはジーンとくるはずです。

猪木は籍こそ入れていないものの、アメリカ修行時代に事実上の結婚をして女の子に恵まれました。その後、日本でも一緒に暮らしていましたが、やがて離婚。そして愛娘は猪木と別れた後、8歳で小児癌によって亡くなっています。猪木が映画中で思わず亡き息子の名前を叫ぶシーンは、亡き娘の名前を叫んでいるようにも見えます。実際に猪木は台詞を“俺流”に変えて演じさせてもらったといいます。また、大魔神の別れた妻・芳子は石田えりが演じていますが、愛し合いながらも心が擦れ違うという関係は、元妻の倍賞美津子を連想させます。

『光る女』主演で相米慎二監督にしごかれた武藤敬司

そして大きな話題になったのは、87年10月に公開された『光る女』で武藤敬司が主演に抜擢されたことです。当時の武藤は25歳。スペース・ローンウルフというアイドル的なキャラクターで売り出されている時期でした。その武藤に目を付けたのは『翔んだカップル』、『セーラー服と機関銃』、『ションベンライダー』、『魚影の群れ』『台風クラブ』、『お引越し』、『あ、春』などのヒット作を世に送り出した相米慎二監督。主役は大男の松波仙作ということで、相米監督はバスケットボール選手などの様々なスポーツ選手をリサーチしたなかで、スター性を秘めた武藤を選んだといいます。武藤は役作りのために髭を伸ばし、プロレスの試合を休んで3月から6月まで映画撮影に専念しました。

相米監督はワンシーンをワンカットで撮る「長回し」で知られ、厳しい演技指導でも有名ですが、演技未経験者の武藤にとって撮影現場は過酷だったようです。

「今でも覚えているのは”俺の嫁になんねぇかや”っていう俺の台詞が気に入らないってことで、街中を歩いている女性に”あいつにその台詞で話しかけてこい!”って。あと、俺の役柄は汚い山男だから、新宿の街中にホームレスの人がいたら”その隣に座ってこい”って言われて、スタッフがみんないなくなって、ずっとそこに座っていたりとか(笑)。そうやって照れとか、恥ずかしさがなくなるんです。あとはリハーサルばっかりやらされるんですよ。何もないところから自分で考えて描いていかなきゃいけないからさ。そのリハーサルの間に台詞を覚えちゃうんですよ。映画の世界…デタラメに大変だったよ、やっぱり。毎日が憂鬱だったよ。でも大変な思いしていれば、終わった時にはやっぱり充実感もあるよね。あれから何回か、映画とかドラマに出ているけど、『光る女』以上に大変なのはなかった」と武藤は当時を述懐します。

プロレスラーが映画に起用されるのは、知名度や人並み外れた肉体というのもあるでしょうが、やはりリングの上でファイトを通して喜怒哀楽を表現するパフォーマーだからではないかと思います。紹介した作品のほとんどはビデオあるいはDVD化されているので、ぜひ鑑賞してみてください。

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