年収400万円以下なら地方や海外移住を視野に
藤原和博さん 撮影/(C)IHA
――増税に加え、物価も上昇しています。家計の負担をいかに減らすかは、大きなテーマです。
藤原和博さん 家計の最大負担である住居費を下げるには、地方に移住するのもひとつの手です。実際、生まれ故郷でもなんでもない田舎に移住し、古い家屋をオシャレに改築したりして、地元で働くという生き方を選ぶ若い世代も増えています。例えば、島根県の隠岐諸島・海士町は、小さな離島なのに約1割が島外から移住者。みな20~40代の若い世代ばかりです。他の地域でも、都会から移住してきた若者が、活性化に生きがいを見出していたりします。特に最近、地方都市に30~40分くらいで出ていけるような田舎に人気が集まっているようですね。
――生活コストを下げて、豊かに暮らす。地元回帰の流れも出てきていますね。
藤原 日本だけじゃなく、海外に移住するのもアリだと思いますよ。知り合いでタイに移住した家族がいるけれど、実際、収入が半分になったとしても十分豊かに生活していける。例えば、親や祖父母世代が出資をして、時々そこに遊びにくるようなライフスタイルもいいのでは? 東京で生きるならダブルインカムで800万円を目指し、その半分の年収の人たちは海外や地方に移住する。そのほうが、よほど豊かで生きがいが見つかるのではないでしょうか。
海外生活を経験した子どもに「日本人バージョン3.0」が出てくる
―― 若手の起業家にも、海外移住を選ぶ人は増えているようです。藤原 僕の周りでは、シンガポールやフィリピンに移住する若手の起業家が多いですね。彼らのなかには、税制メリット以外に、“子供の教育”という視点から移住を考える人も少なくない。日本では幼稚園から大学まで2000万円くらいの教育費がかかるといわれていますが、「それなら海外でインターナショナルスクールに入れたほうがいい」と考えるわけです。
実は、日本を根底から変えるのは、そういった海外生活を経験した彼らの子供たちの世代じゃないかと思っています。本物の国際感覚を身に付け、相手がどこの国の人間だろうとびくともせずに堂々と交渉できる。そういった「日本人バージョン3.0」ともいうべき新世代が出てくると、日本もまた面白くなってくるでしょうね。教育の視点から地方都市や海外に移住するのは、一考に値します。
★次は、日々の消費生活についてアドバイスをいただきました!
教えてくれたのは……
藤原和博(ふじはら かずひろ)さん
教育改革実践家/杉並区立和田中学校・元校長/元リクルート社フェロー
1955年東京生まれ。78年東京大学経済学部卒業後、株式会社リクルート入社。東京営業統括部長、新規事業担当部長などを歴任後、93年よりヨーロッパ駐在、96年同社フェローとなる。2003年より5年間、都内では義務教育初の民間校長として杉並区立和田中学校校長を務める。08年~11年、橋下大阪府知事の特別顧問、14年~佐賀県武雄市の教育政策特別顧問に。キャリア教育の本質を問う[よのなか]科が話題に。詳しいプロフィールはホームページにて「よのなかnet」http://yononaka.net
『人生の教科書[よのなかのルール]』『人生の教科書[人間関係]』(ちくま文庫)など人生の教科書シリーズ、ビジネス系では『リクルートという奇跡』、情報編集力の本質を和田中での改革ドキュメントとともに解説した『つなげる力』(ともに文春文庫)、『35歳の教科書―今から始める戦略的人生計画』『藤原和博の必ず食える1%の人になる方法』など著書多数。最新刊はコミュニケーションと対人関係が苦手な日本人のための手引き『もう、その話し方では通じません』(中経出版)。
取材・文/西尾英子