長期優良住宅

消費税後こそ考えたい、100年住宅の再検証(2ページ目)

ここのところ消費税8%、そして10%引上げ後の住宅について記事を展開していますが、この消費税による一時的ブームで忘れがちな、住宅のあり方の底流に流れる本質の一つ「長期優良住宅」「100年住宅」について改めて触れてみたいと思います。

河名 紀子

執筆者:河名 紀子

家づくりトレンド情報ガイド

1.家族の未来を経済的に守れる家

欧米

「家は家族のシェルター。ハード面だけでなくソフト面でも」と、ある欧米女性の言。そういう住宅観は日本より根付いている?

50年後の日本の人口は5000万人減って8000万人と半減することが予想されています。50年後なんて自分は生きてないからいいや、と考えがちですが、50年後は私たちの子どもたちの時代です。2人に1人が高齢者で、稼いでも稼いでもほとんどが税金や福祉にもっていかれる時代になった時、住宅はどうあるべきかを真剣に考える必要があります。

逆に考えれば、こういう時代になった時、しっかりした住宅は子どもたち家族を経済的にも精神的にも守ってくれるシェルターになるのではないでしょうか。

人口減で消費税が今後どんどん上がってくることを考えられます。増税は建物だけでなく、引っ越し費用や火災保険、各種申請費用、解体工事、廃棄処理費にもかかってきます。リフォームの場合、工事費にもかかりますが、引っ越し・解体・廃棄処理費などは発生しません。そういう意味でも消費税が最もかかる新築は最初だけにし、あとはリフォームなどで長く持たせることは、トータル税金コストという意味でも節約できるのです。

2. 20-30年建替えコストと、長く住み継ぐコスト比較

建物が建ってから壊されるまでの建物の総合的な価値をライフサイクルコストと言います。建築費はライフサイクル全コストのほんの25%程度、1/4程度にすぎないとも言われています。右肩上がりの経済や収入が期待できない日本のこれからの家づくりは、住宅そのものの寿命を考えたコスト、またその維持にかかるランニングコストなどをトータルに考えることが大切です。住宅の初期投資である建築費をどれだけ抑えても、その後のランニングコストのことを考えていないと、結果的に大きな出費をすることになるのです。

建物の維持コストとして最も目に見えるのは、光熱費でしょう。支払い額が月々目に入りますので、気になるところです。また、火災保険や地震保険などの保険料も耐震性、耐火性に優れた住宅であれば1/3~1/4に抑えられます。

日本では木造住宅の平均寿命が25~30年と言われているので、今の25年もつ住宅と100年持つ住宅とで、築後75年のライフサイクルコストを簡単なシミューレションですが比較図をつくってみました。
試算

25年ずつ建替えた75年間住居費総額と100年住宅を建てた75年間住居費総額を簡易試算。25年建替えモデルは100年住宅建築モデルより約1.5倍のコストがかかるとみられる(メディア・ハウジング研究所試算。無断転載・複写を禁じます)

前提として、住宅に必要なメンテナンスコストは、25年間でほぼ最初の新築工事費用と同額程度かかるとして、100年の間に25年住宅は4回建て替えをしますが、100年住宅はライフスタイルに合わせて25年ごとに大規模リフォームを実施するとします。

結果、100年住宅の75年間の住居費総額はリフォーム費を含めても1.45億円、25年住宅の75年間の住居費総額は3回の建替え費を含めると2.25億円と1.5倍の差が出てきます。これはおよそ2世代が死ぬまでにかかる住居費となります。年間住居費で換算すると、100年住宅は約193万円/年、25年住宅は約300万円/年となります。

1.5倍の住居費を払うために、1.5倍働かなければならないと考えると、やはり長くもつ住宅を建てて住み継いでいくことの経済的メリットがいかに重要かということが分かると思います。また住居費用の節約だけでなく、建て替えに伴う産業廃棄物の節減効果も大きいですから、社会全体や地球環境という面からも優しい住宅と言えるのはないでしょうか。残り2つのポイントは追ってご紹介します。
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