ライドフィールはノーマルとは全く別物
ポルトガルのリゾート。ホテルのエントランスで受け取ったのは、オースティンイエローも鮮やかなM4だった。バケットシートに深く腰掛けて、スタートボタンを押すと、ごくわずかにパワートレインが震えて、エンジンが掛かった。拍子抜けするくらいに“静か”な幕開けである。軽くアクセルペダルを踏みこんでみれば、とたんにその本性が顔を覗かせる。心地よい抵抗を右足裏に与えつつ、きわめて軽く、きわめてシャープに、直6エンジンは反応した。
まずは、電動ステアリングのアシスト量、アシ回りのダンピング、そしてエンジンマネージメントを、それぞれコンフォート×コンフォート×エフィシェンシーにセットしてホテルを抜け出す。
基本的に、ソリッドかつフラットなライドフィールはノーマルモデルとは全く別物である。コンフォートモードであっても、ステアリングへのレンスポンスは常にどっしりと重めなため、全体的に固められているという印象が勝つ。
徐々に速度をあげていくと、強いボディに支えられてアシが細やかに動きはじめ、路面からのショックをきれいに吸収してくれるようになった。速度をあげればあげるほど、乗り心地がいい、と思えるようになってゆく。
高速道路で、スロットル全開を試す。7500rpm+αまで澱みなく回った。その間、エンジンにさほど負担が掛かっているようには思えない。431psを発するエンジンは、とてつもなく丈夫な箱に入れられてまわっているかのように、ブレなく、がっちりと燃焼し続ける。
もっともっと踏み込みたい気持ちを抑えて、ひとまずクルージング。7速1750rpmで100km/h。
さらに速度を上げてゆくと、空力が相当に効いているのだろう、高速走行時の安定感は旧型以上だ。静粛性もスポーツカーとしては最上レベル。細かな段差の連続を見事にいなすアシの動きも心地よい。
エフィシェンシー+オートモードからでも、アクセルペダルをめいっぱい踏んでやれば、直ちに3速へとキックダウンし、強烈な加速体勢に入った。この、たくましく瑞々しいトルクフィールを知ってしまうと、何度でも加速を繰り返したくなってしまう。