役者としてドラマで活躍するお笑い芸人たち

大河ドラマや朝ドラなど、実力派俳優陣がキャストされる作品でも役者として活躍するお笑い芸人。にこやかに演じるタイプ、不穏な空気が漂うタイプ、同じお笑い芸人でも俳優としてのカラーは十人十色です。

北風と太陽を合わせ持つ 原田泰造(ネプチューン)

シリアスな演技を見せた『連続ドラマW 血の轍』(画像はAmazonより:http://amzn.asia/1BvivAB)

シリアスな演技を見せた『連続ドラマW 血の轍』(画像はAmazonより:http://amzn.asia/1BvivAB


淡々と演じる冷酷な近藤勇にゾクッとした『龍馬伝』、娘を愛する職人気質の父親が温かかった『ごちそうさん』、嘘を重ねる不甲斐ない男が絶妙だった『黒の斜面』。一本気な人と嘘をつく人、賑やかな人と孤独な人、おおらかな人と神経質な人、相反する人物を自由自在に演じ分ける原田泰造の心には北風と太陽が共存しているようです。

最近では『全力失踪』や映画『ミッドナイト・バス』で主演、さらに深みを増した演技で家族や人生を想う男性を見せてくれました。コメディ、ミステリー、時代劇、社会派ドラマ、特定のジャンルにおさまることなく、シリアスな泰造と情けない泰造に磨きをかけ、私たちを驚かせることでしょう。



コミカルな隣人 児嶋一哉(アンジャッシュ)

親近感あふれるキャラクターがどこか可笑しいアンジャッシュの児嶋一哉。『フリーター、家を買う。』で演じたハローワークの職員に「あぁ、こんな人いる!」と思っていたら、『救命病棟24時』の第5シリーズではマイペースすぎる医師を、『ルーズヴェルト・ゲーム』では奔走する営業部長を独特のテンポで演じ、ドラマを盛り上げました。社内ではスリッパに履き替えちゃう、熱血じゃないけどやる時はやる……そんな身近なおじさんを抜群のさじ加減で演じます。

実力派の俳優陣に埋もれることなく、変則的だけど心地いいリズムは、さらに頭角を現しそう。放送中の『もみ消して冬~わが家の問題なかったことに~』では、うわさ話好きのクリーニング屋さんを飄々と演じ、あらゆるドラマにマッチすることを証明しています。


 

少年の目をした巨匠 ビートたけし

ドラマ史に残る名作との声も多い『点と線』(画像はAmazonより:http://amzn.asia/0VJvvTD)

ドラマ史に残る名作との声も多い『点と線』(画像はAmazonより:http://amzn.asia/0VJvvTD


日本のドラマ史に残る名作、松本清張の『点と線』で主役の刑事・鳥飼重太郎を演じたのは2007年。少し猫背で言葉少な、パッとしない初老刑事の哀愁と信念のにじませ方は圧巻でした。どんな肩書きの人物を相手にしても怯むことなく人間対人間として構える姿、妥協なく闘い続ける生きざまをピリピリを見せる演技は、作品を奥深いものにしています。

狂気を含んだ激しい役こそ淡々と演じながらも、そこに凄みと少年のような純粋さを覗かせるところにビートたけしたる所以を感じます。2017年に完結した映画『アウトレイジ』シリーズでは圧倒的な気迫で日本中を沸かせました。

 

ドラマを刺激する曲者 今野浩喜

不気味さもある、屈折した感じも怪しさもある演技で見せる今野浩喜(元キング オブ コメディ)。それは、まだ見たことのない未知の演技を爆発寸前でためこんでいるかのようです。人生を斜めにとらえ、根拠のない自信を楯に言葉を強めるものの小心者の匂いがプンプン。そんな独特の雰囲気が『TEAM–警視庁特別捜査本部―』のキレまくる青年や、『リバースエッジ 大川瑞探偵社』の口下手な漫才師役では、見事に活きていました。

話題作『僕たちがやりました』のパイセン役の刺激的な演技は記憶に鮮明、放送中の『カクホの女』では、これまたクセのある鑑識を演じています。人間の歪み具合を微調整しながら見せる今野浩喜ワールド、まだ何かを隠しているはず。



ハラペコ系演技をリードする 塚地武雅(ドランクドラゴン)

巨匠・山下清を演じた『裸の大将』(画像はAmazonより:http://amzn.asia/acq2h5v)

巨匠・山下清を演じた『裸の大将』(画像はAmazonより:http://amzn.asia/acq2h5v


ドラマで彼の姿を見つけると頬がほころびます。愛妻家の父親を演じた『まれ』や心配性の上司を演じた『花咲舞が黙ってない』、温かい雰囲気を醸し出すのは体格だけではないようです。やわらかい声と表情、コント番組でおなじみのキャラクターに見るノホホン&トホホの雰囲気も演技に生きています。

巨匠・山下清を演じた人気シリーズ『裸の大将』での麦わら帽子と白いシャツ姿には塚地武雄の人間味がみごとに映り話題になりました。どんな時代にもクラスや職場に必ずいる微笑ましさには心が和みます。現在放送中の『西郷どん』では、西郷家に仕える心優しき熊吉を好演、4月スタートの『正義のセ』では初めての検事役に挑戦します。


 

スウィングする先鋭 藤井隆

どんな場面でも堂々と存在する藤井隆、余計なものをすべてそぎ落とし、いたってにこやかに演じる表情が彼の魅力。『真田丸』では真田家に仕える忠実な忍びを力演、お笑い芸人の宝庫と言える放送中の朝ドラ『わろてんか』では人情味あふれる芸人役で存在感を発揮します。日本中が夢中になった『逃げるは恥だが役に立つ』では、星野源演じる会社員の同僚を快演、愛ある演技で幸せオーラを振りまきました。

しかし、そんな括りを取り払って演じる謎めいた役もしなやかなのが、すごいところ。歌、ダンス、内在する先鋭的な感覚が演技の幅を広げます。2018年4月放送の三谷幸喜脚本の『黒井戸殺し』では執事役で登場、昭和が舞台のミステリーでどんな顔を見せるのか興味は尽きません。

 

 

時代を照らす太陽系 渡辺直美

ファッションセンスあり歌唱力あり、時代の申し子と言えそうな渡辺直美。生き生きと生きる彼女には、時代が求める気持ちのいい力強さを感じます。そして演じる役も彼女らしい明るさに満ちています。

『五つ星ツーリスト~最高の旅、ご案内します!!~』(読売テレビ/2015年)や『カンナさーん!』(TBS系/2017年)は、まさにそれ。彼女の飾らないオープンマインドが物語に命を注ぎ、私たちまでも前向きにしてくれます。天真爛漫な彼女の魅力のひとつは生命力を感じるソフトな声。フワリとその場を包み込みます。2018年8月公開の映画『SUNNY 強い気持ち・強い愛』でも、彼女らしいキラキラに会えそうです。



ほかにもまだまだ!活躍するお笑い芸人

今シーズンのトップランナー『99.9-刑事専門弁護士-』でパラリーガルをユニークに演じる片桐仁(ラーメンズ)は『ザ・クイズショウ』の第1シーズンでヒリヒリする心理戦を演じた実力派。『FINAL CUT』(フジテレビ系/火曜9時)で嫌なかんじのカメラマンを演じるやついいちろう(エレキコミック)は『ひよっこ』や『ユニバーサル広告社~あなたの人生、売り込みます!~』にも出演、自由を愛する個性派です。

また、ジョン万次郎役の劇団ひとり、着物姿が凛々しい桂久武役の井戸田潤(スピードワゴン)や徳川家定役の又吉直樹(ピース)、『Dr.倫太郎』で瑞々しい演技を見せた虎役の近藤春菜(ハリセンボン)など、お笑い芸人が競演する『西郷どん』にも注目してください。

 

俳優として活躍するお笑い芸人は昭和から

お笑い芸人がドラマで活躍しているのは、ここ最近ではありません。名優と呼ばれたコメディアンは昭和時代にもたくさん。『私は貝になりたい』のフランキー堺、ジャズ・バンドでありながらコントでも一世を風靡したハナ肇とクレイジーキャッツの、植木等、谷啓も味わい演技でドラマを盛り上げました。


なぜ、お笑い芸人は演じることができるのか

1.声が大きい
ライブでネタを披露する彼らの日々の努力は想像どおり。「○○で~す」と大きな声で登場するだけで、会場をワッと盛り上げる吸引力が、その賜物です。ドラマはシーンごとに撮影するので、会話することなく突然台詞を発することもしばしば、瞬発力も求められます。大きな声をいつでもきちんと出せるお笑い芸人は、それだけで貴重な存在と言えるでしょう。

2.人間観察の習慣がある
演じるには、その人物を理解する必要があります。脚本を読み込むことも大切ですが、ふだんから人間を観察し感受性を高めることも大切。人を笑わせるための基本も人間観察。日頃から人間観察の習慣があるから彼らは台詞の向こうの人間心理を、きちんと表現できるのです。

3.躊躇がない
キレる、笑う、とぼける。躊躇なく表情豊かに表現するのがお笑い芸人。その感覚は演技にも生きています。非日常的なものに躊躇なく挑む爆発力は役者として十分な強み。演じる人間に限界はなさそうです。

4.代役がいない
唯一無二の演技を見せるお笑い芸人。過酷な競争が強いられるお笑いの世界で「誰かに似ている」「どこかで観た」そんな印象を与えてしまうことはあり得ないこと。そんな厳しい環境のなかで育んだ「彼らにしかできない演技」には代役がいません。

「笑い」というフィルターを通して人間を表現するチカラが、フィルターを外したドラマの世界で開花しているお笑い芸人。スパイスを効かせながら、映画、ドラマ、舞台と演技を最適化させる技術にも驚きます。次に何を見せるのか、大いに期待できそうです。


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