そして今季、ほぼ唯一の完全恋愛ドラマと言えるのが、アラフィフからアラサー男女の恋愛を描く『続・最後から二番目の恋』。復讐やサスペンスの要素を一切廃し、鎌倉を舞台に大人の男女が”恋”に右往左往する様子がコミカルに表現されています。視聴率も絶好調!
まるでカメレオン! 役によってガラっと色を変える 浅野和之
鎌倉を舞台に大人達の恋愛ジタバタが描かれる『続・最後から二番目の恋 』
浅野さんは1954年生まれの60歳。桐朋学園大学の演劇科を経て安部公房スタジオで活動。その後、野田秀樹さん率いる夢の遊眠社の舞台に立ち、劇団解散後も数え切れない作品で八面六臂の活躍を見せています。
浅野さんがモデルを務める『篠崎光正演技術』(ガイド私物)
青山劇場×岡本太郎
「演劇オヤジ」がモテる3つの理由って?
……と、今季のドラマで活躍する「演劇オヤジ」3人をPickUpしてみましたが、ここ何年かで映像の世界でもモテモテになった感のある「演劇オヤジ」達。その秘密はこんなところにあるのではないでしょうか。1 50歳を超えて活躍する舞台俳優は強者揃い
日本で”俳優”と名乗っているのは約1万人。その中で舞台やテレビの仕事だけで生活出来ているのは1000人程度と言われています。10代、20代と夢を追っていても、ふと将来の事が不安になり、もしかしたら別の人生もあるのではないか、と悩む30代。ガイドの周囲では”40歳まで”とある種の期限を決める夢追い人も多いです。そんな中、50歳を超えても舞台に立ち続け、様々な役を演じる「演劇オヤジ」達は揺るぎない個性と確かな技術の両方を併せ持った強者ばかり。現場でのアドリブ力や人生の深みをしっかり画面に映せる演技力は映像の世界でも重宝されます。
2 最近のドラマは”F2層”をターゲットに作られている
ある調査によると、10代から20代前半の1日のテレビ視聴平均時間は1時間15分程度……そう、近頃の若年層はテレビではなくPCやスマホに向かう時間の方がずっと長いのです。そんな実態を受け、今テレビ局が主にターゲットにしているのは”F2層”=35才~49歳の女性達。今季のラインナップを見ても10代、20代のキラキラ恋愛ドラマやアイドルを主演にした学園ドラマが姿を消しているのはご承知の通りです。となると、当然出演者の平均年齢層も上がり、「演劇オヤジ」達の活躍の場も増える訳です。特に病院、警察、会社が舞台のドラマには生活感もきっちり出せる大人の俳優が不可欠です。
3 演劇=共同作業、の経験値がモノを言う
コスト的にも時間的にもギリギリの状態で作られている昨今のテレビドラマ。昭和の時代のように、圧倒的なスターが現場の全てを取り仕切っている、なんて状況ではありません。現場でいらない拘りを見せてゴネたり、撮影の順番にケチを付けたりする年配俳優は”使いづらい人”と言われ、いつの間にか画面から姿を消していきます。そんな中、舞台で叩き上げてきた「演劇オヤジ」達は現場が出演者とスタッフとの共同作業で成り立っているという事を痛いほど分かっています。年下の俳優達とも上手く付き合え、スタッフへの気遣いもバッチリ。年齢を重ね、キャリアはあっても現場の和を乱さず自分の仕事をきっちりこなす……現場の誰から見てもありがたい存在である事は間違いありません。
如何でしょうか。演劇ガイドの独断と偏見(?)を駆使し、ドラマ業界で「演劇オヤジ」がモテる理由を分析してみました。個性、演技力、現場対応能力、そして……協調性。舞台で鍛えられたこれらの武器を手に、「演劇オヤジ」はこれからもドラマ界を席巻していく事でしょう。