プラグインハイブリッドに乗るとエコドライブしたくなる
極めて軽く跳ね上がるデへドラルを開けて、すとんと尻を落とし込むように乗り込んだ。サイドシルは、マクラーレン12C並みに高い。プロトタイプのときにも感じたことだが、i3ほどには新しくみえないインテリアが少し残念。もっとも、最新BMWモードに近いので、そのぶん冷静にドライブを始めることができたのもまた事実だけれど……。BMWお得意の、ドライブモード設定がi8にも、もちろん用意されている。コンフォート・スポーツ・エコプロの3モードだ。コンフォートとエコプロでは純粋なEVモードも選択可能で、都合5つのプログラム走行パターンのなかから好みのモードを選ぶことができるというわけだ。
フルに充電された試乗車を受け取った。ためらうことなく、コンフォートで完全EVのeドライブモードを選ぶ。そして、極めて冷静に、アクセルを優しく踏みしめて、じわじわ滑らせるようにi8を走らせ始めた。
今さら無音走行には驚かない。けれども、これほどまでにド派手で新しい姿形のクルマが、驚くほど静かに走り出してしまうこと自体に興奮する。
V12エンジン搭載のフェラーリにでも乗ったなら、とにかくエンジンを吹かしまくって、“どうだ聞いたか!”と言わんばかりに周りを眺めたくなるものだが、i8では逆に、なんとかして無音で走っていること気づいて欲しいと思うのだ。こちらを見ていない人に気づいてもらうことは難しいけれども、追い抜きざまにチラっと振り返れば、はっと息をのむように驚く顔を見ることができるだろう!
できるだけエンジンを掛けずに走りたいと思うようになるのもまた、不思議な心の変化である。あれだけ吹かすことが好きな人間であっても、だ。たとえEVモードでも、アクセルペダルを底まで踏み込んでしまうとエンジンが掛かる。もちろん、バッテリーがなくなっても(最大37kmまで走るというが、実用的には20kmそこそこのはず)掛かってしまう。だから、ドライバーは極力、ガソリンを使わないですむように、使う際にはできるだけ回生エネルギーを貯められるように、その他の電気の使い方さえも気遣いながら、ドライブしたくなるのだ。
つまり。人間というものは現金で、本格的なEV走行の可能なプラグインハイブリッド車に乗れば、ガソリンをけちりたくなるのである。それはそのままエコドライブに繋がるのだった。