そもそも、天皇賞・春とはどんなレースなのか
技術が発達する中で、私たちの生活は日ごとに変わっています。たとえば、連絡の手段。昔は「手紙」がよく使われましたが、今ではメール、LINE、あるいはツイッターやフェイスブックなど、さまざま。手紙でやりとりする人は、本当に少なくなりました。しかしどうでしょう。手紙が完全になくなったかといえば、決してそうではない。確かに見る機会は減ったけど、残り続けています。そして、昔のように「主流」ではないけれど、一方で、手紙には独特の「味」を感じるようになりました。
手紙、それも手書きのものが来れば、書き手の心がこもっているように感じます。「この手紙の出し主はいい人なんじゃないか」と思ってしまいます。手紙で許しを乞われれば、大抵は「気にしないで下さいよ」と返事を出します。
実は5月4日に行われるG1天皇賞・春(芝3200m・京都競馬場)も、それに近いレースなのです。
最近の流行とは違うけれど、競馬の「粋」を味わえるレース
天皇賞・春を説明するうえで欠かせないのが、その距離。日本ダービー(2400m)や有馬記念(2500m)といったレースに比べ、天皇賞・春の距離はずっと長い3200m。「マラソンレース」ともいわれており、当然タフな持久戦が展開されます。昔は、「天皇賞・春こそ、真の最強馬を決めるレース」ともいわれました。距離が長く、タフな戦いになれば、ごまかしが利かないからです。そのため、かつては時代々々の実力馬が、最強を証明しようとこぞって参戦したものです。
しかし、近年になると世界の競馬はスピード化を迎えます。日本も同様で、次第に3200mで勝つスタミナよりも、もっと短い距離で勝てるスピードを評価される傾向が強くなりました。そのため天皇賞・春は、実力馬たちの参戦が昔より減少。海外で同時期に行われる、1800~2400mのレースなどを目指す馬が多くなったのです。
ただしその変化の中で、天皇賞・春というレースの持つ「味」は、より濃く出るようになりました。確かにスピード主流の中で昔より存在感は下がりましたが、それによりマラソンレースの貴重性、持久力勝負の面白さが際立ったとも言えます。
最近の流行とは離れるけれど、昔ながらの味がある。マラソンレースで見られる各馬のタフさ、そして長距離ならではの細かな駆け引き。スピード全盛の時代に少なくなった、真っ向勝負の力比べ。まるで手書きの手紙のような、本気のレースを味わえる。それが天皇賞・春なのです。
そして2014年。5月4日に行われる天皇賞・春には、久々に「現代の実力馬たち」が何頭も参戦することになりました。今年は実力馬たちの本気の戦いが見られそうなのです。
ということで次ページでは、天皇賞・春に出走する実力馬を3頭紹介します。