電気自動車・EV/電気自動車・EV基礎知識

なぜ? テスラの時価総額は上がり続けるその理由(2ページ目)

テスラモーターズ社はここ1年で株価が7倍に上昇し、時価総額も300億ドルを超え、多くの人々から注目されてきました。今日では、電気自動車業界の注目の的となっているテスラ社ですが、実際には創業以来、彼らは資本政策に力を入れ続けてきたという背景があります。

中島 徳至

執筆者:中島 徳至

電気自動車ガイド

日本で“テスラ社のような存在”が生まれ得る条件 

さてここまで取り上げてきたテスラ社ですが、果たして日本でも同じような存在となるベンチャー企業は現れるのでしょうか?

私は、日本でテスラ社のような存在が生まれるために最も必要な要素は政府とベンチャー企業が手を取って協力していくことだと考えています。近年、米国政府は電気自動車産業に積極的で、エネルギー省の低利融資を始めとしたEVベンチャー企業に対する様々な補助政策が発表されています。

融資を取り付けたテスラ社経営陣の手腕もさることながら、その融資を実行したアメリカ政府、さらに言えば、GM・フォード等の車体ではなくイギリスのロータスの車体をベースとすることを許可したアメリカ政府の対応に、とても感心しています。なぜなら、ロータスの車体を使用した事で、多くのモータージャーナリストから絶大な支持を得る事ができたからです。

仮にビック3の車体を使えとアメリカ政府が指示を出していれば、EVに不向きな大型車両での投入は、電費性能の低下や操舵性の問題などからチューニングする課題が多く、ここまで期待を得る事はできなかったでしょう。ビッグ3が崩壊したという背景もありましたが、そのような既得権益に囚われない米国政策こそが、未来の社会を支えるベンチャーを育むために重要であり、日本の政府や政治が次世代産業を育てる上で頭を悩ませる問題は明らかで、既得権者との間で発生する弊害に対して、意思を持って取り組むことが課題であると私は思います。

今EVベンチャーを育てる為には何が足りなくて、何を補えば成功させる事ができるのかを、既存の有識者メンバーではなく、業界に精通したEVベンチャーを経験した有識者を集めるなどして、新興EVメーカーの台頭を認めるのか、認めないのか政府は真剣に考える時期に来ているのではないでしょうか。

政府には戦後、政府政策に伴い日本を牽引してきた大手自動車メーカーのサプライヤー体系を、電気自動車の普及により大きく変えてしまう可能性を有しており、その懸念のあるEVベンチャー企業に対して、大掛かりな補助を行いにくいという実情があります。

その見方は日本の産業を守るために必要とも見て取れますが、一方でそれはベンチャー企業の芽を摘むばかりでなく、諸外国の政策と比較しても、日本では十分な支援得ることのできないために、結果として企業流出や他国の企業との間に埋めることのできない差が生まれてしまうと私は危惧しています。次世代を担う自動車ベンチャー企業に目を向けないことは、結果として日本企業の国際競争力を低下させてしまう可能性があるかもしれません。

自動車製造産業は開発から製品化に多くの時間を要し、多くの資金を必要とする産業であり、かのトヨタやホンダも軍需で規模の拡大に成功した経緯があります。皆様もご存知のエコカー減税は、ガソリン車両にも117車種で3000億円の補助金が使われているように既存自動車メーカーへの補助が行われている中、新興メーカーが政府の援助なく民間のみの力で国の中枢企業へと成長することは極めて難しいといえます。テスラの成功事例から、これからの日本の新産業育成の大きなポイントとなるヒントが隠されているのではないでしょうか。
  • 前のページへ
  • 1
  • 2
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます