これからの賃貸 「借り(仮)住まい」とは?
天屋工務店、そして関連の不動産部門のアマヤホームのテーマは「生活のデザイン化宣言」。いわゆる「デザイナーズ物件」の先駆者的存在として各種メディアに紹介され、高いデザイン性を主軸としてエンドユーザーの暮らしをボトムアップする企業として注目されてきました。ですが「設計=デザイン、施工の精度はもちろんですが、オーナーさまの利益が上がるための事業計画が一番。いくらデザインが良くても入居率100%でなければ失敗ですから」と吉原社長。もちろん、アマヤグループでは募集、管理までをトータルにおこなっています。そこで設計を行う吉原社長の根っこは「建築家=デザイナー」なのか、聞いてみました。玄関まわりのしつらえ。和洋のテイストが混ざり合って気持ちいい雰囲気。ポストは「風車マーク」入りのオリジナル。ポイント10の「玄関に来客の目をひく仕掛けがほしい」を実現しています(クリック拡大して、かわいいポストを見てください)
「私は『建築家』でも『デザイナー』でも『クリエーター』でもありません。大学の工学部・建築学科を卒業していますが、学生時代は体育会スキー部で毎日汗ばかり流していましたが(笑)。優秀だった同級生は、ほとんど建築以外の仕事をしていて、私がいまでも設計の仕事をしていることが不思議なくらいです。そうですね、建築家といえば、以前こんなことがありました。ある建築関係の専門雑誌から編集者の人が取材に来たのですが、『私は建築家ではないです』と言うと、『それでは掲載しません』といって帰られたという経験があります。当然のことを言っただけで不愉快ではありませんでしたが、それくらい建築やインテリアのアカデミックな部分とは無縁に仕事をしています」
「今度はアアルト風にやってみよう、とか、デ・スティル風に、あるいはバウハウスっぽくやったり。ヤコブセンの『SASロイヤルホテル』のカラーリングをそのまま使ったこともあります。『パクリでしょ?』って言われれば『その通り!』と答えますよ。でも時代の流れ、空気を読んでいるという自負はあるし、マネしているうちに自分の中でオリジナルに昇華していくんです」
そう屈託なく語る吉原さんのスタイルは、さまざまなタイプの「クリエーター」に会った経験のある私にはとても新鮮に感じます。
「賃貸住宅は『借り住まい』ですが決して『仮住まい』ではありません。そこで生活する人たちにとって『仮』はありえないのです。私は戸建て住宅も設計しますが、『住まい』という考え方でいうと、どちらも同じエネルギーでデザインしないと失礼だと考えています」
と吉原さんは熱く語ります。まずは、ワンルームで一人暮らしを始めた人が結婚して、次も吉原さんの設計したワンランク上の広めのデザイン賃貸に移り住んでくれることも多いそう。そうしたライフスタイルに合わせてグレードアップしていくという仕組みがだんだんと出てきて、それがとても嬉しいといいます。
外国のファッション雑誌で綺麗な色のグラフィックを見つけたらそのまま壁仕上げの色指定に使ったりもする自由さ、そのネタ元はさまざまな音楽や映画などアートやカルチャーだったりすることも多いそう。欧米に「ネタ」を仕入れに旅行したり、休日はインテリアショップや展覧会を精力的にめぐったりと好奇心旺盛でフットワークも軽やかな吉原さん。デザイナーというより「デザインへの感度の高いビジネスマン」という印象をもちました。次回も、「吉原流」の住まいの考えをお聞きする予定です。
■吉原雅浩さん
株式会社天屋工務店代表取締役。温泉があることで知られる東急東横線沿線の綱島で生まれ育つ。賃貸住宅の設計はもちろん注文住宅や最近は保育園などの設計も行っている。また不動産部門のアマヤホームの代表も兼任。消防団や商店街の行事も日々忙しくこなし、地元に密着した活動も精力的に行っている。
■アマヤグループ
1960年代から横浜市・綱島を拠点として、東横線沿線に賃貸物件や戸建て住宅、分譲マンションなどを提供してきた設計・施工の「天屋工務店」と不動産部門の「アマヤホーム」で、設計・施工・募集・管理までを一貫して行う。テレビや雑誌媒体ではデザイン性が語られがちだが、地主に向けた優良資産で高収益事業のプロパティマネジメント業務への評価も高い。
問い合わせ先:アマヤホーム(http://www.amayahome.com/)