打者としても投手としても、著しい進化を見せている大谷選手。チームも大谷が本塁打を放てば昨季から4連勝、投げても5連勝と“不敗神話”ができつつある。
一回二死、ボールカウントは1ストライク。大谷は、相手捕手の鶴岡のリードを読んだ。昨季の女房役だった鶴岡は「こういう場面で高めで攻めることが多かった」ことを思い出した大谷は、高めのストレートか低めのスライダーと予想。2者選択から低めのスライダーに的を絞った。ところが、次球は145キロの高めストレート。大きく“外れた”にもかかわらず、快音を残した打球は左中間スタンドに突き刺さった。
1年目の昨季、初アーチは34試合、92打席を要したが、今季は開幕から12試合、47打席目でマークした。昨季記録した3本塁打はいずれも中堅より右だったが、自身初となる左方向への1発。しかも、低めのスライダーという読みが外れ、“バットの芯ではなかった”にも関わらずスタンドへ放り込むとは、確実に進化したといえるだろう。
五回にはチェンジアップを右手1本で右翼線へ運ぶ技ありの二塁打。こうなったら大谷をあまり褒めない栗山監督も「1発より二塁打が大きかった。褒めたくないけど大きかった」と笑顔を見せた。これで野手出場10試合連続安打、同4試合連続打点。規定打席に達していないが、打率はレギュラーでトップの.391だ。チームも大谷が本塁打を放てば昨季から4連勝、投げても5連勝と“不敗神話”ができつつある。
オフの間に上半身の筋力強化に努め、体重は4キロ増の90キロとなり、パワーアップした。今季は投手優先でスタートしたため、打撃練習は少ないが、その中でも決して妥協せずにマシン打撃を続けている。4月20日の楽天戦では116球を投げて2勝目を挙げた大谷は、打撃の好調さからして、いよいよ二刀流へ口を挟む者のいなくなってきた。
ちなみにプロ入り2年連続で勝利と本塁打の両方を記録したのは、1998~99年の川上(中日)以来、15年ぶり。また、高卒1年目から2年以上続けたのは、1950~60年金田(国鉄)の11年、54~55年梶本(阪急)の2年、65~69年池永(西鉄)の5年、66~74年堀内(巨人)の9年に次いで2リーグ制後5人目になる。
問題なのは、今後、日本ハム首脳陣が大谷をどのように起用していくかだ。今まで投手としての大谷は中8日や中7日だったのは、昨季後半から背中の痛みや張りがあったからで、その心配もなくなった現在、中6日で先発させる方向にある。そして、打者(野手)・大谷は中6日のうちの3日目と4日目をDHとして起用したい方針。もちろん、セ・リーグとの交流戦では、セの本拠地球場の場合、投手兼中軸を任せることになる。
今季の開幕前、大谷は栗山監督と「今年は何としても結果を残す」と約束した。投手、野手ともに早々と結果を出し始めた二刀流に、“エースで4番”は決して夢ではなくなってきた。