鎌倉に家を建てるための要件を歩きながら学ぶ
大人の街歩き(鎌倉)
神奈川県内にはいくつか人気のエリアがあるが、そのうちのひとつがかつて幕府が置かれた歴史の街、鎌倉。目の前に海、それ以外を山に囲まれた立地は海も、山も身近という、関東平野周辺では珍しい、変化に富んだ風景を生み出し、そこに歴史がアクセントを添える。根強いファンがいるのも無理はない場所である。さらに最近では相続のためか、比較的買いやすいサイズの宅地の販売が増えており、若い世代の移住も増えているという。
とはいえ、鎌倉は急傾斜地、景観を保存すべき地域などが多く、かつ階段利用の土地、旗竿地、変形敷地など、一筋縄ではいかないような土地が少なくない。そのため、単純にマンションを建てる、建売一戸建てを建てるなどといった手法がとれない場所もある。もちろん、鎌倉に限らず、一戸建てを建てる場合には、その街ごとに異なる要件を知る必要があるが、特に鎌倉にはそうした制限が多いと考えれば良いと思う。
その鎌倉を愛する建築家やその他専門家が集まった作った一般社団法人ひと・まち・鎌倉ネットワークが、2013年9月から「大人の街歩き」と称した街の案内ツアーを実施している。私も初回の散歩に参加、建築家の方々に引率されて鎌倉駅に比較的近いエリアを歩いてきた。歩きながら、地域の相場やら建築上の制限などについて話を聞いたり、建築家の人が建てた家を覗いたり……。
また、鎌倉市は特に埋蔵文化財包蔵地が多いが、それ以外の街に同様に調査が必要な場所がないかといえばそんなことはなく、国分寺市や府中市にも多いし、あまり縁のなさそうな東京都千代田区でも82カ所、葛飾区には28カ所など、意外にあちこちに点在している。東京都に関しては東京都教育委員会が遺跡地図情報をインターネットで提供しているので、そうしたものを参考にすると良いと思う。
●参考URL
東京都遺跡地図情報インターネット提供サービス
鎌倉市の埋蔵文化財の取り扱いについて
また、地域によっては土地面積に対して植栽の比率が決められていることがある。そこで工事の際に邪魔だからと樹木等を伐採、更地にしてしまうと、後日、その比率を満たすために新たな植栽を用意せねばならず、二重の出費になることがあるとか。住宅メーカーは建物の建設までしか面倒を見てくれないから、外構費用についてはあらかじめ予算取りをしておく必要があるが、そこで決まりごとがあるとしたら、後で自分でやるという方式にはできない。鎌倉市に限らず、景観、緑の維持に熱心な自治体であれば、この点も注意が必要だろう。
以上、散歩自体でもいろいろ勉強になったのだが、最後にもっとも面白かったのが、その日ガイドをしてくださった建築家の自邸を見学させていただいたこと。家を建てたいと思う人であれば、他の家を見ることはおおいに参考になるが、なかなかそうしたチャンスは少ない。が、このツアーではまったく異なるテイストの家を3軒も見せていただけ、それだけでも参加して良かったとしみじみ。鎌倉に限らず、他の街でもこうしたツアーがあれば、その街で家を建てる人にはおおいに参考になると思う。
このツアー、2013年9月に始まり、同年11月、2014年2月と過去に3回行われており、各回12人が参加、複数回参加している人もいらっしゃるので、延べ人数は30人ほどとか。歩いたのは浄明寺、北鎌倉、鎌倉の海近くエリア。大人の街歩きの企画に携わる建築家の倉本琢さんによると「今後は極楽寺、稲村ヶ崎、長谷などを歩く回を考えています。特に長谷は店を持ちたいという人が多いエリアなので、そうした内容もいいかなと。ただ、4月から6月の鎌倉は非常に賑わうので、年中そんな感じと思われても困るので、実施は少し先になるかもしれませんが」とのこと。住みたい場所があるのなら、とりあえず、賃貸利用で試しに住んでみるのがお勧めだが、そこまではできないとしても散歩くらいならと思う。
●「大人の街歩き」についてのお問い合わせは
一般社団法人 ひと・まち・鎌倉ネットワーク
続いて街を歩いて物件を見て歩くディスカバリーツアーをご紹介。