プロ野球選手か歌手になりたかった10代
そして次のステージへ
――先程、ずっと野球に打ち込んできたというお話がありましたが、なぜそこからミュージカルの世界に?福井
野球はかなり一生懸命やっていまして、高校野球までは続けていたんですね。そんなある時、自分はプロの世界に行ってもやっていけるだろうか、と改めて考えて、それは難しいだろうと思ったんです。それでもう1つの夢だった”歌を歌う仕事”に挑戦してみようと。ただどうすればいいのか良く分からなくて迷っている時に、観劇が好きだった姉の影響でミュージカルの舞台を観て「これしかない!」と。自分が進む新しい道が見えたような気がしました。
(撮影:演劇ガイド・上村由紀子)
――17年間在団なさった劇団四季では『美女と野獣』のビーストや『アイーダ』のラダメス、『キャッツ」のマンカストラップ、ラム・タム・タガー等の大役を多数演じられました。四季を退団なさる時はどういう思いで?
福井
そう……17年間も在団していたんですよね。本当に劇団にはお世話になりましたし、素晴らしい作品にも沢山出演させて頂きました。これが全てではないのですが、退団の理由の1つは四季のレパートリー作品以外の歌を自由に歌ってみたいと思ったからなんです。お陰様で坂元健児さんや演奏の宮崎誠さんとのライブで様々な場所に伺う事も叶いました。ミュージカルやストレートプレイの舞台以外にもライブやコンサートと云った活動はこれからも続けていけたらと思っています。
――そして2013年の『レ・ミゼラブル』では、バルジャンとジャベールの二役を担当されました。
福井
大きな経験をさせて頂いたと思います。ただ渦中にいる時は色々大変で……特に二役の切り替えに苦労しました。役としてはジャベールの方がキツかったですね。ジャベールは実は登場時間はそんなに長くない。そして常に自分の中の正義を成立させる為にバルジャンを追い続けるという強く一貫した意思を持っている。その気持ちや役としての緊張感をずっと持続させていくのが本当に大変でした。
劇団四季在団時には主にミュージカルで活躍し、2013年の新版『レ・ミゼラブル』ではバルジャンとジャベールの二役を演じた福井晶一さん。本作『死神の浮力』では幼い娘を殺害され、妻と共に犯人の青年に復讐を誓う小説家・山野辺という新しいフィールドの役に挑みます。
自分の中にある言葉を丁寧に探しつつ、今ご自身が乗り越えようとしている壁や課題についても率直に語る姿に、俳優という仕事の厳しさとやりがい、そして福井さんの真っ直ぐなお人柄が滲み出ているようでした。
→ 次のページでは稽古場ミニリポート&牧田哲也さん(D-BOYS)のコメントを大公開!