1年のなかで、もっとも美しいG1「桜花賞」
オトコ馬の戦いに先立って行われるのが、牝馬三冠の第一弾であるG1桜花賞。こちらは昔から一貫して、個人的に大好きなレースです。競馬のレースの中でも、とにかく美しいのが桜花賞。レース名の通り、桜の季節に行われますから、うまくいけば、桜花賞のときはコース脇の桜が咲き誇ります。年によっては葉桜になることもあるので、私は「何とか桜花賞の時まで咲いていてくれ」と毎年ヤキモキしていますが……
牡馬(オス)以上にデリケートで繊細な牝馬(メス)。しかもまだ若いこの時期の戦いですから、レースではたびたび波乱も起こります。断然の有力馬が沈んだことも、過去に多々ありました。しかしその儚さや危うさが、なんだか桜と通じるようで、私はいつも妙な感慨に浸ってしまうのです。
2頭の名馬が、桜の下で名勝負を演じた2005年
思い出深い桜花賞といえば、先ほどのディープインパクトと同じ2005年。皐月賞はディープインパクト一色でしたが、桜花賞は2頭の牝馬に注目が集まっていました。4戦3勝のラインクラフトと、3戦3勝のシーザリオです。ラインクラフトは一度の敗戦こそあるものの、1400~1600mのレースでスピードを活かし、華麗に勝ち進んできた牝馬。一方のシーザリオは、もっと長い2000mのレースで牡馬を負かすなど、男勝りの能力を見せつけてきた牝馬。その2頭が初めてぶつかったのが桜の舞台でした。
この戦いを前に、大いに困ったのは福永祐一騎手。なぜなら2頭とも、彼がずっとコンビを組んできたからです。結局、福永騎手はラインクラフトに騎乗し、シーザリオは吉田稔騎手が乗ることになりました。
圧倒的な強さを見せてきた2頭の違いは、距離適性。桜花賞が行われる1600mこそ得意距離のラインクラフトに対し、それよりもう少し長い距離がベストと見られていたシーザリオ。この差がどう出るか、それがレースのポイントでした。
そしてそのレースがこちらです(シーザリオは青帽の7番、ラインクラフトはピンク帽の17番)
外側からのスタートでありながら、スピードを生かして先行したラインクラフト。対するシーザリオはスタートこそ良かったものの、その後のポジション争いでゴチャゴチャに巻き込まれ、やや後方へ下がってしまいます。
直線では満を持してラインクラフトが抜け出し先頭へ。やはり1600mの舞台ではこの馬か、と思いましたが……。その後ろから猛追してきたシーザリオの迫力。前半のロスを一気に取り返そうとするシーザリオの強さに驚いたのを覚えています。
しかし、先頭でゴールしたのはラインクラフト。シーザリオは“アタマ”の分だけ及ばず2着でした。「前半のロスさえなければ」とも考えられますが、しかしラインクラフトのスピードと「この距離では負けない」という意地も垣間見えた一戦でした。
なお、その後ラインクラフトは二冠目のオークスには行かず、3歳の牡馬が集まるG1のNHKマイルカップ(芝1600m、東京競馬場)に参戦。同じ距離で、オトコ馬相手にG1を連勝します。そしてシーザリオは福永騎手と再びコンビを組み、オークスへ。こちらも驚異的な走りでタイトルを奪取しました。
2頭の名馬が凌ぎを削った、たった一度の戦い。それが2005年の桜花賞でした。
そして迎える今年の桜花賞。いったい、どんなレースになるのでしょうか。とりあえずは、レースの時に鮮やかな桜が咲いていることを祈っています。
※レースの情報は、すべて2014年3月末時点のものです。
(リンク)
4月のレーシングカレンダー|JRAウェブサイト
皐月賞 歴代勝ち馬|JRAウェブサイト|データファイル
桜花賞 歴代勝ち馬|JRAウェブサイト|データファイル