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普遍性の高いキッコーマンとヤクルトのボトルデザイン

おなじみのキッコーマンのしょうゆ差し、そしてヤクルトのプラスチック製のボトル。どちらも普段なにげなく目にしている日用品ですが、このカタチを生み出したのは日本を代表するデザイナー栄久庵憲司さん(キッコーマン)と剣持勇さん(ヤクルト)。「暮らしにひそむ、デザインの意味を考える」第2回では、このふたつをピックアップしてみました。

喜入 時生

執筆者:喜入 時生

インテリア・建築デザインガイド

卓上しょうゆびんの登場は1961年

キッコーマンのガラスでできた、しょうゆびん。皆さんのご家庭や定食屋さんなどで見かけるおなじみのカタチですね。これをデザインしたのは GKインダストリアルデザイン研究所所長、現・GKグループ代表の日本を代表するインダストリアルデザイナー、栄久庵憲司(えくあん・けんじ)さんです。「GK」といえば、楽器、オートバイから都市計画まで手がける「アイディー(インダストリアルデザイン)」を学ぶ学生にとっては今でもまぶしく輝く憧れのデザインチームです。
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海外バージョンのキッコーマン・ボトル。アルファベット表記もピッタリとなじんでいてカッコいいですね。

この、前世紀半ばにデザインされた見慣れたカタチの卓上しょうゆびんは、さまざまな工夫がほどこされています。それまでの、しょうゆさしで多く見られた「液ダレ」を起こさないように、注ぎ口の模型をいくつも作成して検討されました。その結果、口部分の下を短くしたところ、液ダレもなくキレもよく出るようになり、この形状に決定されたという経緯があります。
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近所のスーパーで買ってきた現行のビン。優れたデザインは十分、認知されているので「Gマーク」はいらない気もしますが……。

これまでも、何度かデザイン変更をする話が持ち上がったたそうですが、栄久庵さんが「変更のしようがない」とおっしゃったそうです。それくらい、完成度の高いデザインといえます。50年以上たった今でも、世界で愛されるポップな形状のボトル。海外でjapanese soy sauce(しょうゆ)=Kikkoman、と認識されているほど普及した背景にこの、びんが貢献していることは間違いないでしょう。
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2011年に誕生50周年を記念して発表された限定「ヨーロッパデザイン卓上びん」。どことなく北欧・フィンランドのイッタラ社のデザインを思わせます。いまとなってはレアなアイテムですが、オシャレで欲しくなるデザインですね!(キッコーマン、ニュースリリースより)。

いまはスーパーなどで見かける機会は減りましたが、カップの色が黄色く同じ形状のソース用卓上びんもあります。「しょうゆは赤、ソースは黄色」と、なんとなく刷り込まれているのも、この色を可視化させて分けるというデザインが成功している証拠。また、びんの首部分のくびれは「女の人が中指から親指までで持つことができる」という配慮がなされています。現在いわれている「ユニバーサル・デザイン」の先駆的存在であるといえます。
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キャップ部のアップ。注ぎ口が液ダレしないように逆三角形になっていることがわかります。

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GKデザインによる代表作「成田エクスプレス253系NEX」。1991年。20世紀初頭に活躍したデザイナー、レイモンド・ローウィの『口紅から機関車まで』(書籍として鹿島出版会から刊行されています)を思わせる幅広いデザイン活動です!


ヤクルトのデザインは、あのデザイナーだった!

乳酸菌飲料としておなじみの「ヤクルト」。発売開始は、なんと戦前の1935年です。そのころはガラス瓶で販売されていました。それから33年後の1968年に、独特の形状をした今のプラスティック容器がセンセーショナルに発売されました。この容器のデザインを担当したのは、椅子好きの方には良く知られたインテリア・デザイナーの剣持勇(けんもち・いさむ)さんです! 剣持さんといえば柳宗理さんたちとともに日本のモダンデザインを牽引し、有名な「ラタンチェアー」はMoMAのパーマネントコレクションにもなっています。イサム・ノグチやチャールズ・イームズとも親交のあった世界的なデザイナーでした。
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いま見てもポップでかわいいデザインです。キャップはアルミ。ストローも付いていますがフタを外してゴクゴク飲むのが好きです。
 

ラタン

1961年に発表された、ご存知の名作椅子「ラタン・チェア」。この作品により、イサム・ケンモチの名前は世界に広まりました。

直線と曲線で構成されたアトミックで宇宙船のようなフォルムは、子供ごころにも「カッコいいな~!」と思わせる魅力がありました。このヤクルトの殻容器で、小学校図画の時間で何かつくったり、夏休みの自由研究などで工作物をつくった思い出がある人もいるのではないでしょうか? 私はこれを、たくさんあつめてロボットをつくった記憶があります。それくらい身近な容器ですが、プロダクトデザイン界の巨匠・剣持さんの作品だったことは最近知りました。
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1970年に発売されたヤクルト「ジョア」も剣持さん晩年のデザインでした。これも洗練された美しいフォルムです。

この、独特の形は「こけし」がモチーフだともいわれています。いわれてみれば、たしかに……。剣持さんのインテリアや椅子にも通じる「ジャパニーズ・モダン」ですね。また、ガラスから樹脂素材への変更というのは、流通上の重量軽減という問題も解決しています。軽量化によって、ヤクルト・レディーとよばれる商品を自転車などで宅配する方々の負担も軽減させました。
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スーパーなどでは5本パックなどで売られているヤクルト。パッケージの裏面には立体商標登録に関するこのような文章が書かれていました。

また、ヤクルト容器は2010年、立体商標登録を認めなかった特許庁の審決を取り消し、一転して知財高裁は「識別性あり」として立体商標登録を認められました。飲料の容器のカタチだけの商標登録は、コカコーラの瓶に次いで2例目。インテリアでは「Yチェア」が2011年に立体商標登録が認められています。たくさんの「ヤクルトそっくりさん」が市場に出回っていましたが、アンケート調査で98%以上の人が容器を見て「どうみてもヤクルト」と認識したことが決め手になったそう。
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2本並べてみました。同じ1960年代の、いわばジャパニーズ・ミッドセンチュリー・デザイン。50年以上、日本人の生活に受け入れられているロングセラーのパッケージデザインの代表です!

今回は、キッコーマンとヤクルトの容器を見てきましたが、定番デザインにはデザイナーの関わっていないアノニマス・デザインも数多くあります。ロングセラーを続けている製品たちは飽きのこないカタチや使い勝手といった完成度の高さをもつものが多いようです!
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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