世界で販売されるi-MiEV
EVの普及促進にあたっては、自動車メーカーの努力だけでなく、各国の政府・自治体や電力会社などとの連携が欠かせません。三菱自動車は電気自動車を普及させるにあたり、日産と同様にEVの普及促進に向け、世界各国50以上のパートナーと連携し、i-MiEVの実証実験を行っています。具体的な動きとしては、i-MiEVを通じた世界各国の自治体・電力会社・大学 などによる 実証実験や普及プログラムの支援などが挙げられます。ここでは、実際に電気自動車の普及に向けてどのような実証実験が行われているか、幾つかの例をお伝えできればと思います。
■スペインでの実証実験
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)によると、三菱はi-MiEVを使い、2013年4月から2015年度まで、スペイン・マラガ市において、「スマートコミュニティ」の実証実験を行います。これから本格化する電気自動車の普及に向け、他企業を巻き込んだコンソーシアム創出によるEV管理システムや、電力マネジメントシステム構築などの実証実験を行います。
ここでは、i-MiEV160台と約15~20分で充電80%を完了するCHAdeMO方式の急速充電器23口が配置されます。この実験結果をロールモデルとし、今後欧州の他の国や中南米地域に対しても事業展開することができるようになると私は考えます。この事業にスペインの大手電力・通信会社や日本の三菱重工業、三菱商事、日立製作所などといった大きな企業も参画することからも、プロジェクト規模や電気自動車に関する期待の高さを伺うこともできます。
■ロシアでのEV活用
(図)ロシア大統領西部に納入されたi-MiEV
ロシアは排出ガス削減のため、環境対応車の推進にも積極的に取り組んでおり、ロシア政府のEV普及に対する1つの姿勢を示した活動だと捉えることができます。これからロシアも電気自動車を使用したさまざまな実証実験を行い、国を挙げて電気自動車の普及に努めるようになるのではないかと私は考えています。
上記に加えて、アメリカ、タイ、香港、アイルランドなど複数の国々で、実証実験を行うなどして国や現地有力企業を巻き込んだ電気自動車普及活動を積極的に行っています。それに伴い、i-MiEVを始めとする日本の電気自動車が世界中の人々から注目されています。
(図)i-MiEVパートナーとの連携
i-MiEVの感想として
上記のようにリーフに劣らず、活躍の幅を広げるi-MiEVですが、やはり車両の乗り心地や性能に関して気にかけている人は多いと考えます。私が初めてi-MiEVに試乗したのは2009年でした。2001年に日本国内の全ての大手自動車メーカーが電気自動車から撤退し、当時電気軽自動車が国内で販売されていたメーカーは、国内17番目の自動車メーカーであるゼロスポーツしかありませんでした。次世代自動車普及センターから購入者補助金を得られる唯一の軽自動車として9年間販売を続けていたのは、当時はEVセラビューしかなく、大手自動車メーカーがEVを市場投入してきた期待の自動車でした。
この車両は、電気自動車専用のシャシではなくガソリン車両との併用で、EV車としては試行錯誤の上、発売されました。水冷式AC IPMモーターを採用し、ガソリン自動車同様のシステム制御技術を行い、リチウムイオンバッテリーは温度、電流、電圧の管理をBMSというバッテリーを管理するECUを搭載しています。
また車両全体では、VCUと呼ばれる車両全体を制御するECUが搭載され、バッテリー、モーター、急速充電器と社内システムをCANで連動させる技術は、当時のハード・ソフトともに最先端技術が注がれた一台でした。またこれからの急速充電器として期待されているチャデモの充電器と通信認証により、安全に充電できるクルマとして、当時各地で多くのイベントやデモンストレーションに利用されていました。
i-MiEVを始めとした電気自動車は、ヨーロッパを初め世界各国の多くの地域で注目されています。今後も自動車メーカーと各国の政府・自治体やインフラ企業などが連携しての取り組みが活発化して行く中で、電気自動車の普及促進活動が世界中に広がっていくと、私は考えています。