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蔵前、変化を続ける東京東側エリアの中心地

2010年前後以降、江戸時代に栄え、その後西側エリアに人気を奪われてきた東側エリアが土地の歴史を活かし、新しく生まれ変わりつつあります。その中心地のひとつ、蔵前を見ていきましょう。

中川 寛子

執筆者:中川 寛子

住みやすい街選び(首都圏)ガイド

江戸時代の俗称が地名に、
町工場と住宅が入り混じる風景に変化

蔵前橋の碑

稲穂をイメージ、黄色く塗られた蔵前橋のたもとに立つ碑。この地にはかつて蔵前国技館もあった。現在は東京都の下水道施設に(クリックで拡大)

隅田川沿い、浅草の南側にある蔵前は江戸時代に徳川幕府の御米蔵(浅草御蔵)があったことがこの地の俗称となり、やがて地名となったという場所。ここの蔵には幕府が天領他から集めた米を収蔵されており、東を隅田川、他の三方を堀で囲った土地には67棟もの蔵が並んでいたとか。蔵の西側にある蔵前には多くの米問屋や札差(旗本、御家人たちの代行としてコメの受け取り、運搬、売却をする商売)が軒を連ね、江戸でも有数の、繁華で活気のある街でした。明治維新以降は政府が管理することになり、政府御蔵と称されたものの、関東大震災で焼失、往時の面影は失われてしまいます。

 

駒形エリア

厩橋からみた駒形あたり。中心辺りに玩具メーカーの本社ビルが。隅田川に近いこともこの地の魅力(クリックで拡大)

現在の蔵前はといえば、通り沿いにはビルが建ち並び、少し入ると小さな町工場や住宅が混在する街。周囲を浅草橋、田原町などの問屋街に囲まれた場所でもあり、このエリア内にも隅田川と平行する江戸通り沿いにはおもちゃ問屋などが並びます。また、北側にある駒形には大手玩具メーカー本社などが立地しています。

 

タイバービル

国際通り沿いにあるタイガービルは1934年(昭和9年)竣工の、台東区で一番古いビルで現役。文化財に指定されている(クリックで拡大)

ところが、その昔ながらの町工場と住宅が入り混じる風景がこのところ、変化し始めています。それが目に見える形になったのが2011年から始まった、台東モノづくりのマチづくり協会が手がける「モノマチ」なるイベント。御徒町から蔵前、浅草橋にかけての2キロ四方の徒蔵(御徒町から蔵前の意で、カチクラと読む)エリアには元々、モノ作り系の企業やショップ、職人さん、クリエイターなどが多く集まっており、そうした街の財産を活かして街づくりをしようというのがこのイベント。具体的には工房見学や制作実演、ワークショップ、モノ作り市などといった来街者と地元でモノを作る人たちのコミュニケーションを図るような内容となっており、年々参加者は増える一方。

 

草木染めのショップ

同じく国際通り沿いにある草木染めの店。ワークショップも開かれている。この通り沿いにはしゃれた店が多い(クリックで拡大)

蔵前でも、域内のショップや工房などで同時多発的に行われる第一土曜日の蔵前なるイベントが続けられており、こちらもじわじわと人気が高まり、常連も増えていると聞きました。

 
蔵前神社

かつて国技館があったことから、相撲関係者にも親しまれてきた蔵前神社。こうした古い風物も裏通りに散在している(クリックで拡大)

実際、街を歩いてみると古いビルの中にセンスを売りにする個性的なショップが増え、こだわりのモノ作りというこの地の伝統が良い形で生かされていることが分かります。2013年にはこのエリアを含む、「ヒガシ東京」の情報を発信するWEBメディアなども登場し、露出も増えている様子。銭湯に神社、工場とアトリエ、こだわりのショップ、こじんまり落ち着けるカフェや飲食店などが混じり合い、今後もおもしろくなりそうな雰囲気です。

 

続いて都営浅草線・都営大江戸線蔵前の交通事情、住宅事情を見ていきましょう。

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