アベノミクスが目指すもの
「アベノミクス」は、安倍内閣が掲げる経済政策である。金融政策、財政政策、成長戦略の3大施策を政権発足直後に提唱。それぞれを「矢」と呼び、わかりやすく国民に浸透させたことも特徴で、それは今のところ効果的だといえるだろう。「3本の矢」が目指すものは、インフレーション(以下、インフレ)である。物価が下がるデフレ下において、企業は保守的思考になるため投資は滞る。個人の貯蓄も現金のまま保持しておくのが理論上望ましく、経済市場に寄与しない。
そこで、インフレターゲット(2年で2%)を設定。黒田日銀総裁は就任(2013年3月20日)後に貨幣流通量を2倍に増やすと宣言した。円安が一気に進行、それにつられて株式市場も賑わった。わずか数か月の間に得た為替差益や保有株式の値上がり益が一部不動産市場に回ったとされている。その代表的な一つが都心の高額マンションだ。だが、それが本丸ではない。
インフレが引き起こす現象
次にインフレについて、今一度おさらいしておこう。それはいいから本題に、という方はさっそく次のページをご覧ください。インフレとは、物価が上がり、貨幣価値が下がる状態をいう。したがって、現金のまま貯金をしていても、資産としては目減りするだけ。つまり、未来に同じモノが同額で買えなくなる。だから換金性の高い資産に替えておこうとする需要が起きる。不動産や金融商品(投資信託、不動産投資信託、株式)などが典型だ。現在、日本の個人資産は約1600兆円ともいわれている。その一部を市場に呼び込み、経済の活性化を図るのが狙いだ。
企業には低金利で設備投資を促す。得た収益を「賃金に還元することで社員の消費力増」、そして「法人の税収増」の2つの循環を政府側は描く。この春、久々に「ベア」(ベースアップ「基本給昇給」の略)という言葉が新聞紙上を賑わせた。総理自ら民間の給与増を推奨する姿に違和感を覚えた人もいるかもしれないが、結果として意向を汲み取った企業が少なくない。
いま日本は、1000兆円超もの莫大な財政赤字を抱えている。ますます高齢化が進むことも鑑みれば、長期的税収増は国に課せられた大命題のひとつである。いやもっと言えば、少子高齢化や人口減少など将来に蔓延する(市場の成長が困難であるという意味での)負の印象を振り払うムードやきっかけが求められているのかもしれない。
アベノミクスでマンションが値上がりする5つの理由とは?