ただ撮るだけから卒業しませんか?ひと味違う写真を撮る方法を教えます
毎年開花するたびにきれいだなと感動して撮影する桜。だけど適当にレンズを向けて撮っているばかり、何年たっても変わり映えしない桜の写真しか残っていない、と薄々感じているのなら、今年こそはステップアップした桜を撮ってみませんか。たった3つのポイントを理解するだけで一味違う桜のショットを撮影できます。背景のボケで桜の印象をコントロールしよう
背景にもピントが合っている作例。手前の桜から背後までよく見えて状況を説明する画像としては適格。
背景をぼかした作例。ピントが合っている主役の桜だけをより引き立てるのであれば背景にボケを入れると効果的。
桜を撮るときに何気なくレンズを向けてしまうことはよくあります。オート撮影でも見た目にきれいに撮れますし、最近の機種では高画質な写真に仕上がり、これで満足してしまいがちです。
そこでステップアップさせる最初の方法は、背景ボケのコントロールです。
背景ボケとは、ピントの合う範囲を変えて行うテクニック。レンズの絞りを変えることで背景をぼかしたり、背景までピントを合わせたりすることができます。
撮影モードを絞り優先モードに設定すると背景ボケが撮りやすくなります。撮影モードダイヤルを「A」モードに合わせて、絞り優先モードに設定。
レンズの絞りはF2.8というように数字表記しています。数字が小さいほど背景がボケが大きくなり、数字を大きく設定するほど背景にもピントが合ってくるようになります。
タッチパネルで簡単設定できる機種では、背景ボケのコントロールスライダーを動かしボケ具合を調整できるものもあります。
手前に主役となる桜にピントを合わせて背景をぼかすことで、主役の桜の存在が浮き立つように見えてきます。反対に背景にもピントが合うと全体の風景を見せることが出来る写真になります。また、ズームレンズで望遠側にするに従い、ボケ味はより強調されるようになります。
どちらの見せ方で表現するかにより、背景のぼけ具合をコントロールするという選び方をします。
まずは背景をぼかしての撮影にトライしてみましょう。
ズームレンズの広角と望遠でメリハリをつけよう
枝に広がる桜の花をフレーム一杯に入れた作例。このような広い範囲を写すにはズームレンズの広角側で撮影する。
選んだ桜の花をアップで撮影。ピンポイントで撮りたい場合は、望遠で寄せて撮るのが効果的。ボケも効きやすい。
桜の木のどこを撮っても桜の写真です。なんとなくレンズを向けて撮った桜の写真がいまひとつインパクトがないと感じるのは、撮りたい部分を見定めてないことが理由のひとつでしょう。
メリハリをつけた写真にするために、桜のどの部分をフレームに入れるのかを意識することを考えてみます。
広く枝に咲き広がる桜を撮るのか、桜の花びらを撮るのかではまったくフレームの作り方は違ってきます。そこで利用したいのがズームレンズです。
ズームレンズは、最も広い範囲が写る側を広角と呼び、そこから遠くにある被写体を大きく寄せることを望遠にしていく、などと言います。
ズームレンズは何となく使うのではなく、このメリハリをつけた写真にするときに意図的に使うと効果があります。広い範囲をフレームに入れて撮りたいのであれば広角側を、ピンポイントでひとつの花などを撮りたいのであれば望遠側で寄る、などという使い方です。
桜のどの部分をアプローチするかを決めて、ズームレンズを効果的に使い分けてみましょう。
色味(ホワイトバランス)や明るさを調整して撮ってみよう
太陽の明るさに応じて桜の色も変化する。夕方のオレンジ色の日を浴びれば桜も色づいて写せる。
桜のピンク色を強調するのにホワイトバランスで赤味を増すという方法があります。実際の太陽光の明るさよりも低い明るさのホワイトバランスに設定すると赤味が増して写ります。例えば晴天の場所で撮影する場合は、ホワイトバランスを曇りに設定するという形。
もっと単純な方法は、太陽光そのものが赤味を増しているときに撮影すればいいわけです。夕方の時間帯には太陽光がオレンジ色になってきます。その時間帯の光を浴びた桜は、日中の光の下で見るものより色づいています。
ホワイトバランスを変えてみたり、撮影する時間帯を変えて桜の色味を変化させて撮ってみるというテクニックです。
逆光で桜の花に光が当たってない状態。花全体が暗く写っている。
内蔵フラッシュを強制発光させて撮影した例。フラッシュ光で花全体が明るく写せた。
カメラに内蔵フラッシュがついていればフラッシュ―モードを強制発光に設定して撮影します。ここで気を付けたいのがフラッシュの発光量の強さ。あまりフラッシュ光が強すぎて、背景の空などが暗く写るようでは失敗。背景の明るさも取り込んで補助光としてフラッシュを入れて撮影することを日中シンクロ撮影とも呼びます。
内蔵フラッシュの発光量を少なく設定するか、絞り優先モードで絞り値を開放値側に設定するとフラッシュ光は少なくなります。
補助光を使う日中シンクロ撮影も応用するとステップアップした桜の写真が撮れるかもしれません。
表現したい桜が一枚の写真に入るように意図的に撮ろう
今回のポイントを活かして撮影した作例。房に咲く桜を主役にして背景はボケを入れて主役の桜を浮きあがらせた。画面全体は、桜の咲いている状況も入れたかったので広角側のフレームを選択。すべてに意図を持ち撮影していくと表現したい写真に近づく。
ここでは、桜の花が咲くひと房を主役として選びました。この房に咲く桜をフレームにどのよう入れるかですが、房の部分をアップにするより背景には咲いている木の枝なども入れたいと思います。そうなると、ズームレンズではやや広角側にして広い範囲が入るようにする必要があります。
レンズから近い距離に主役となる房を配置します。この後に考えなければならないのは、背景のぼかし具合です。
できれば房の桜だけを強調させたいので、ピントの合った房の背景部分はややぼやけたように写したいと思います。
カメラは、絞り優先モードのAモードに設定して、レンズの絞り値を最も数字が小さくなる値に設定します。これで背景はぼやけるはずです。
もう一度フレームに主役となる房を配置して、オートフォーカスでピントを合わせたら、シャッターを押します。
色味を変化させたい場合はホワイトバランスを再設定します。
そして、撮影された写真が上の画像です。このようにどのように撮影のアプローチをしていくかを解説しながら一枚の写真を見ていくと、撮影する手順が理解しやすくなるのではないでしょうか。
背景のぼかし具合とズームレンズの二つの選択肢の組み合わせだけでも十分に表現したい桜の写真を撮ることが出来ます。単にレンズを向けて撮るのではなく、背景のぼかし具合やフレームの大きさに意図を持って設定するだけで、表現力を持った写真になっていきます。
ぜひ今年の桜の写真はステップアップさせたショットに挑戦してみてはいかがでしょうか。