2.5世帯のプランニングによる街かどヘーベルハウス
私は先日、旭化成ホームズ(ヘーベルハウス)の「街かどヘーベルハウス鍋屋横丁」(東京都中野区)を見学してきました。「街かどヘーベルハウス」は、住宅地の中に建設され、一定期間モデルハウスとして利用された後、分譲住宅として販売される建物のことです。約64平方メートル(約32坪)の敷地に建つ3階建て(延べ床面積約170平方メートル)。二世帯住宅に単身の子ども(子世帯の兄弟姉妹)が同居するという「2.5世帯住宅」であることが第一の特徴で、子世帯の姉が同居するというプランとなっていました。また、賃貸住宅として親世帯のスペースを貸すことができるという工夫も盛り込んでいました。
2.5世帯を含む二世帯住宅の場合、親世帯が住まなくなった時に部屋が空いてしまうケースがあるものです。その対策とともに、将来の一部賃貸化のための工夫がリアルサイズで確認できるという物件は希少。ですので、都市部での建て替えなどを検討される方には非常に参考になる物件ではないでしょうか。
さて、第二の特徴(こちらが本題です)が、防災や減災について様々な提案要素が盛り込まれている点で、その内容は以下の通りです。
(1)ALCコンクリート外壁による高い防災性能
(2)災害時におけるエネルギーの自立
(3)地域の防災備蓄拠点として活用
旭化成ホームズの「ヘーベルハウス」は、外壁材として「ヘーベル版」というALCコンクリートが使われるのが最大の特徴です。これは国土交通大臣認定の耐火構造部材で一般的な外壁材に比べ、外部からの延焼を防ぐ性能が高いという特性を有しています。
現代版の「うだつ」で延焼被害を軽減
ただ、外壁材は火に強くても、開口部(窓など)は比較的、耐火性能に劣ることが普通です。そこで、隣家に接する側面の開口部は小さくし、道路側に大きな開口部を設置する工夫を行っています。これにより、明るさや風通しを確保できるようにしています。なお、大開口の脇の部分にも耐火壁を設けています。江戸時代などの住宅には、隣家からの延焼を防ぐため「うだつ」(「うだつが上がらない」のうだつです)を設けていましたが、まさにそのような機能を持つ壁なのです。
災害時のエネルギーの自立については、太陽光発電システム(4.4kw)と、家庭用蓄電池(容量7.2kw)、家庭用燃料電池「エネファーム」(0.79kw)を搭載。停電が発生した場合、日中は太陽光発電システムで発電と充電を行い、夜間は蓄電池で必要最低限の電力を確保できるようにしているのです。
ちなみに蓄電池は携帯電話2台(10w)、40型液晶テレビ(100w)、冷蔵庫460リットル(120w)、リビング照明(200w)を12時間使用できるものだといいます。いずれにせよこのような設備があることで、避難所で生活する期間を短くし、通常の生活に復帰することを早めてくれる可能性があるわけです。
また、「エネファーム」は、平常時にはお湯を作るのと同時に発電を行い、災害時には給水タンクの役割をしてくれます。また、水道が機能していれば入浴も可能になる設備です。このほか、「鍋屋横丁」には雨水貯水槽も用意されていますから、その中の水も生活用水として利用できます。
「街かどヘーベルハウス鍋屋横丁」がユニークなのは、地域の人たちの備蓄拠点として機能するよう考えられている点です。次のページでご紹介します。