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『寝相』滝口悠生インタビュー(4ページ目)

「さいしょの1冊」をテーマに話題の本の話を聞きます。第3回のゲストは、滝口悠生さん。初めての単行本『寝相』について語っていただきました!

石井 千湖

執筆者:石井 千湖

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木目視点で見る祖父と孫の暮らし


――本に収められているのは最初ですけど、3篇のなかでは最後に書かれた「寝相」は、どういうところから書き始めたんですか?

滝口 人が同じ家で一緒に暮らすこと、それからその家のことを書きたいというのがあって、どんな人が住んでいるか考えたときにおじいさんと孫の女の子が出てきました。どうしておじいさんと孫なのかはわからないんですけど、前の二作ではほぼ自分と重なる性別、年齢の語り手だったので、ちょっと違う人を書いてみようと思いました。

――おじいさんの竹春と孫のなつめは、同じ寝相で眠るんですよね。天井の木目視点で家の中を見下ろす冒頭から新鮮でした。

滝口 家のことを書いていたら自然と木目の視点も入ってきたという感じでしょうか。木目が人の顔に見えるとか、よくいうじゃないですか。

――でも木目がかわいいと思ったのは、この小説が初めてです(笑)。この小説の場合、書いていてこんな展開になったのかという驚きはありましたか?

滝口 展開というほど大きな事件は何も起こってないんですけど、最後に登場人物が全員集合するところは「へえ」と思いました。あと、途中で竹春さんの昔の話を延々と書いていたら、現在になかなか戻れなくなってどうしようかと(笑)。無理やり戻りましたけど。

――竹春さんが餃子作りの名手になるところとかおもしろかったです。「楽器」のそうめんとか、滝口さんの小説は食べ物の描写もすごくおいしそうですね。

滝口 ありがとうございます。そう言っていただけるとうれしいです。自分も食べ物や料理について書かれた本を読むのが好きなので。

――どんな本が好きなんですか?

滝口 例えば武田百合子さんの『ことばの食卓』とか。オープンマイクのイベントでこの本の最初に入っている「枇杷」を朗読した方がいて、とても感動したんです。
 

 

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