肥満・メタボリックシンドローム/肥満・メタボリックシンドロームの基礎知識

太っているのは遺伝だった!? 肥満遺伝子ダイエット

友達がやせたというダイエット方法を試してみたけれど、やせられなかった。そんな経験を持っている人はいませんか? やせ方には個人差があります。今までは試してみて自分に合うものを探していくしかありませんでしたが、自分に合うダイエットを科学的に知ることができるツールの一つが「肥満遺伝子」です。今回はガイドの十八番でもある肥満遺伝子について、ご紹介します。

平井 千里

執筆者:平井 千里

管理栄養士 / 実践栄養ガイド

自分にあったダイエットをしていますか?

DNA

遺伝子は両親から半分ずつもらった身体の設計図です。設計図には太りやすい・痩せやすいなどの情報も書き込まれています。遺伝子は個性なのです。だからこそ、友達と同じダイエットではやせられないということが起こるのです。

「ダイエットしてもなかなか成功しない」そんな人は多いと思います。友達に教えてもらったとても効果的だといわれるダイエットをやってみたけれど、全くやせない……。そんな人もいると思います。

実は、やせやすい・太りやすいといった体質は遺伝しており、友達と同じやり方で確実にやせるとは限らないのです!

 

体型は遺伝する。だから、太るのも遺伝する

目の形や髪の色。「お母さんに似てるね」などと、言われることがありますよね。 親子なんだから顔や体型が似ているのは遺伝ですし、当たり前です。そして、体型が似ているということは、太る体質も似ていますし、遺伝しています。太る体質が遺伝しているということは、両親から受け継いだ遺伝子に「太る体質です」と書き込まれているということ。では、その体質を決めている遺伝子はどのようなものでしょうか。

遺伝子は両親からもらった身体の設計図

遺伝子は身体の設計図です。一人ひとり、遺伝子は違います。遺伝子が違うのは「その人の特徴」を表しているから。「遺伝子が違う」と聞くと、遺伝病を思い浮かべて「人と違ったら病気だ」と思う人も少なからずいるようですが、心配はいりません。

人間の遺伝子は父親から1本、母親から1本を受け継いだ2本が1対になったものがくるくるとらせん状に丸まっています。まっすぐに伸ばすと170cmほどといわれています。私たちの遺伝子は父親と母親の遺伝子を半分ずつコピーされていますので、私たちの身体は父親に半分似ていて、母親に半分似ているのです。遺伝子は2本が対になってらせん状に存在しているため「二重らせん」とも呼ばれます。

遺伝情報は、アデニン、グアニン、シトシン、チミン(またはウラシル)という「塩基」と呼ばれる物質の配列によって決まります。2本の遺伝子は、お互いに解けないようにアデニンはチミン(またはウラシル)と結合し、グアニンはシトシンと結合すると決まっています。これによって、何らかの拍子に壊れてしまっても、片方が残っていれば反対側の配列がわかるようになっているのです。

そして、この2本はお互いに絡み合って存在していますので、塩基の位置が相互に入れかわることもあります。これが「個人差」を生み出すのです。

遺伝子とは、一人ひとりの個性が書き込まれた設計図なのです。

遺伝子に書き込まれた体質を知る

「個人差」には、目の色や形、髪の色など、見た目の違いをもたらす個人差もあれば、性格やかかりやすい病気にも個人差があります。遺伝子上の個人差は1つの塩基の違いでもたらされることがあります。この1つだけの塩基の違いを一塩基多型(SNP)と言い、違いがあることを「変異がある」と言います。「変異がある」と言われると、嫌な印象を持つ人もいるかもしれませんが、そうではありません。変異は誰にでもあります。変異があること=個性なのですから。

肥満に関係するSNPは現在、約50種類が知られており、人種によって変異がある人の割合は変わります。SNPはそれぞれが独立しています。1つも変異を持っていない人もいますし、約50種類のすべてのSNPで変異を持っている人もいます(すべての遺伝子を調べた人はいないので正確には断言できませんが)。

日本人ではβ2アドレナリン受容体、β3アドレナリン受容体、脱共役タンパク質1(UCP1)の3つのSNPが肥満と関連することがよく知られており、日本国内では、保険適応外でこの3つの判定を扱っている業者もあります。遺伝子は両親から受け継いだもので、一生変化することはありません。そのため、何度、調べても、結果が変わることはありませんが、これらの業者に依頼した場合、独自のアンケート結果を加味して判定しているところもあるようなので、2社以上で判定を受けた場合には異なった結果が出る可能性もあります。

他のSNPでも、私たち女子栄養大学の研究チームでの研究成果として、アディポネクチンの2つのSNP、インターロイキン‐6、ABCA1などが影響していると考えられています。

遺伝子が違えば、最適なダイエットも違う

私たちの研究は、半年間のダイエットに関するグループ講習を受講した方に協力していただき、遺伝子と身長・体重、血液検査、食事内容の調査などを行ったものです。ダイエット講習に参加した方は、遺伝子の結果を知らずに食生活や生活リズムの整え方を学び、実践しました。私たちの研究成果では、肥満遺伝子を持っていたとしても、きちんと食生活や生活リズムを整えれば、健康的にダイエットできることが証明されています。いずれの遺伝子を持っていても減量効果は十分に得られたものの、減量効果には遺伝子による差がみられました。同じ方法を実践しても、減量効果に大きな個人差が出たのは、遺伝子の違いが影響している部分も少なくないと考えています。

例えば、日本人の1/3くらいは先に紹介したβ3アドレナリン受容体の肥満遺伝子を持っているといわれています。β3アドレナリン受容体の肥満遺伝子を持つ人は、他の人よりも基礎代謝が150~200kcal低いので、肥満遺伝子を持っていない人と同じ食事を食べて生活していたら、1日150~200kcal分ずつ太っていくのです。そのため、1日150~200kcal分(コンビニのおにぎり1個分くらい)、他の人よりも食べる量を控える必要があります。

今回はそれぞれの遺伝子について詳しく解説することはしませんが、自分の持つ肥満遺伝子に対応したダイエットを行えば、今までほど苦労をしなくても、今まで以上のダイエット効果を出すことができると期待されます。友達と同じダイエットをしても同じ効果が得られない理由は、肥満遺伝子にあるのかもしれません。
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