肥満・メタボリックシンドローム/肥満解消・メタボ対策の生活習慣

肥満=皮下脂肪ではない!内臓脂肪を減らすには

生活習慣病の多くは肥満と関係しています。肥満=皮下脂肪と考えると、皮下脂肪を悪玉と考えがちですが、実は内臓脂肪を減らすことが生活習慣病予防に繋がります。男性も女性も、内臓脂肪を減らす効果的な方法は? 内臓脂肪を燃焼させて、生活習慣病対策を行いましょう!

西園寺 克

執筆者:西園寺 克

医師 / 感染症・健康情報ガイド

「皮下脂肪」と「内臓脂肪」は別もの?

肥満女性のお腹

皮下脂肪?内臓脂肪? 効果的に脂肪を減らす方法はあるの?

生活習慣病の多くは肥満と関係しています。肥満=皮下脂肪と考えると、皮下脂肪を悪玉と考えがちです。実は生活習慣病と関係しているのは、消化管の間の脂肪組織である「内臓脂肪」なのです。

お腹の皮膚の下にあって、摘むことができるのが皮下脂肪。一方、腹部の内臓の周りにあるのが内臓脂肪です。というわけで、皮下脂肪と内臓脂肪は別ものですが、構造的な差はありません。

代謝を見ると、内臓脂肪は皮下脂肪と比べて、より機能的に活発な細胞です。活発というのは、「脂肪を溜めやすく出し易い」という意味と、「生理的活性物質を多く作る」という2つの意味があります。この意味については、後ほど説明します。

お腹が出ている方は要チェック! お肉を手で摘めますか?

内臓脂肪の増加は、CTスキャンを用いて腹部の適当な場所の断面像を撮影しないと医学的には判断できません。『Fat scan』という専用の解析ソフトウェアもありますが、CTスキャンは浴びる放射線の量が大量なので、内臓脂肪の確認のためだけにCTスキャンで検査するのは考えもの。

そこで1つの目安になるのが「お腹まわりのサイズ」です。日本人男性では、お腹まわりが85cm以上あるとBMI(体重kg/身長m/身長m)の数値を問わず、内臓脂肪が増加している可能性があります。

特にお腹まわりがあるのに、腹部の皮下脂肪を手で摘めないようだと内臓脂肪が増加している可能性が高くなります。

同じ体脂肪率でも内臓脂肪が多いのは「男性」

内臓脂肪は、脂肪酸の出し入れが容易。筋肉が体重に対して女性より10%増しの男性は、筋肉を動かすための熱源となる内臓脂肪を、女性よりも多く持ちやすい傾向にあります。

男性ホルモンは筋肉を増加させると共に、その熱源の内臓脂肪を増加させる作用があります。男性は内臓脂肪がつきやすく「太っ腹」になりやすいのです。一方、女性ホルモンは内臓脂肪よりも皮下脂肪を蓄える傾向があります。男性のお腹まわりは、内臓脂肪だけではなく腹筋も多いため、女性より太くなります。つまり、同じ体脂肪率の男性と女性ならば、男性のほうが内臓脂肪が多くなるのです。

それでは次に内臓脂肪と生活習慣病の関係、内臓脂肪を減らす方法を解説します。

内臓脂肪は生活習慣病の元! 内臓脂肪を減らす方法は?

内臓脂肪の増加は、糖尿病、血栓症、動脈硬化・高血圧症の促進につながります。

内臓脂肪が多く作る悪玉物質の1つは、腫瘍壊死因子(TNF-α:Tumor Necrosis Factor-α)という物質です。名前の通り、悪性細胞を攻撃します。ただ、攻撃の中に、兵糧攻め的な作用があり、細胞が血糖を取り込むために必要なインスリンの効果を低下させるのです。このため、体全体のインスリンの効果が悪くなり、糖尿病の原因となります。また、腫瘍壊死因子には、別のインスリンの作用を低下させる物質の産生も確認できています。

血栓を作りやすくするPAI-1(plasminogen activator inhibitor-1)の産生も活発です。全身に作用すれば、脳梗塞などの血栓症を起こしやすくする原因となります。

その他、血管の平滑筋の増殖を引き起こす物質を産生することで、動脈硬化を促進したり、血圧の上昇を来す物質の産生が高血圧症の原因になったりと、生活習慣病に大きく関わっているのです。

上記の物質は皮下脂肪もある程度産生していますが、代謝の活発な内臓脂肪の方がより産生が多くなっています。

内臓脂肪を減らすには、総「有酸素運動」時間が大事!

内臓脂肪は預金に例えると、普通預金です。定期預金に例えられる皮下脂肪より引き出しやすい、つまり減らす事はそれほど困難ではありません。

内臓脂肪は腹部にあるから、腹筋運動と考える方がいるかもしれません。しかし、腹筋運動は腹筋を強くしますが、直接、内臓脂肪を減らす効果はありません。

■では、内臓脂肪を減らすために有効なのは何?
脂肪を燃焼させる「有酸素運動」が、内臓脂肪を減らします。有酸素運動を行なった場合、筋肉は蓄えたグリコーゲンを使い、次に血中の脂質(遊離脂肪酸)、肝臓や脂肪細胞が放出する遊離脂肪酸を使います。この時に皮下脂肪よりも、代謝が盛んな内臓脂肪の方が多くの遊離脂肪酸を放出すします。内臓脂肪は代謝が活発、という事は溜まり易く、減り易い性質を持っているということなのです。

よく有酸素運動は、運動の持続時間が20~30分以上ないと脂肪の燃焼が起きないとされています。この解釈は、20~30分以上の持続時間があれば確実という意味です。これより短い持続時間では脂肪燃焼が起きないというわけではありません。詳しくは「有酸素運動のホンネ…連続20分じゃなくても問題ナシ」をご覧ください。

一番大切なのは、「総有酸素運動時間」です。30分を1回よりも、10分を5回の方が総運動時間は長くなります。1回に20分以上と考えると億劫ですが、分割してもよいと考えると有酸素運動を行う時の精神的な負担が軽くなります。

内臓脂肪を減らすために、誰でもできる有酸素運動、“歩くこと”を、おすすめします。「どうせやるなら!効果が高まるウオーキングフォーム」「有酸素運動のホンネ…連続20分じゃなくても問題ナシ」などを参考に、内臓脂肪を減らす生活をさっそく始めてみましょう。
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