保坂知寿さん
保坂
そうですね、SHOW-ismは作品の中に色々なナンバーが散りばめられていて、前回参加した『TATOO14』ではそこがショーを作るぞ!魅せるぞ!っていう劇中のキャラクター達と重なっていく構成だったんですが、今回の『ピトレスク』はある状況下で額縁工場の地下に集まる人達がキャバレーのショーに出演しようとする話でありつつ、今伝えたい事、声をあげていく事の大切さと言うメッセージがより強く込められている様に感じます。勿論、歌ったり踊ったりのパートもあるのですが。
――2月の公開稽古も拝見したのですが、そこで保坂さんはじめ、皆さんの口から「まるでサファリパーク」という単語が出たのが印象的でした。
保坂
そうそう、小林さんチームはそうなんです(笑)。今回もシャンソンを歌っていらっしゃるクミコさんやクラシックの岡本さん、ダンサーとしての活動も多い舘形さん、ミュージカルでも宝塚出身の方や様々なメンバー……それぞれがこれまで通って来た道があって、色々なタイミングや皆の思いみたいなものがふっと重なり合って実現した座組みかな、と思ってます。なかなか濃いメンバーですよ。
敢えて”何もしないで”そこに存在する
2月27日に行われた公開稽古での1ショット
――保坂さんが今回演じるタマラはドイツの貴族階級の出身で画家、そして同性愛者という設定ですが、物語の中ではあまり自分の事を語りません。台本に書かれていない部分の埋め方や役作りについて教えて下さい。
保坂
そうですよね、彼女は余り自分の事を言わないんです。そんなタマラという役のキーワードの1つが「頽廃(たいはい)的」っていう所かな、と思っています。他の役がわぁーっと盛り上がっていてもそれを強く扇動していくんじゃなくて、ちょっと違う目線で皆を見ているというか。彼女の生き方だったり考え方だったりがヒトラーが毛嫌いした「頽廃的」なものの1つの象徴であると捉えています。
それで特に今回はお稽古をしていく内に「何もしない事」が大切なのかな……と。「私は芸術家です!」 「私は同性愛者です!」って演技で表現しようとすると違う方向に行ってしまう。今は「出そう! 説明しよう!」とするのではなく、敢えて何もしないでその場に存在するようにしています。
――それってとても勇気のいる事だと思います。タマラは作品の中でそれまでの経験値から姉さん的立場で発言したりする事も多いですが、保坂さんご自身は如何でしょう?
保坂
私、どちらかと言うとほよよんとしてるんです(笑)。全然グイグイ行くタイプじゃない。そう言えばこの『ピトレスク』の稽古始めの時もコーヒーをバァーっとこぼしてしまい、図らずも楽譜をセピア色に染めてしまいました。小林(香)さんから「流石ですね、体を張って皆を和ませようとするなんて。」とお褒めの言葉もしっかり頂きました!(笑)。
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