お待ちかね? SGLT2阻害薬が実用化されました!
今後も、各社からさまざまなSGLT2阻害薬の発売が予定されています。夢の新薬とはいえ、どのくらい効果があるか、副作用は問題ないのか、今後の課題も山積です。(写真はイメージ)
SGLT2阻害薬の作用機序を簡単に説明します。腎臓は血液をろ過して不要なものを尿として排泄する役目を持っているのですが、糖分も不要物と一緒に腎臓の糸球体を通過して尿細管へ出て行きます。しかし、糖分はエネルギー源なので、むやみに排泄することはしません。膀胱へ送られる途中の尿細管(特に糸球体に近い近位尿細管)で再吸収をして利用しているのです。この時、近位尿細管で流れてくる糖分を待ち構えているのがSGLT2です。SGLT1も尿細管に存在していますが、SGLT2のほうが糖分の再吸収が多いと言われています。そこで、このSGLT2をブロックし、糖分の再吸収を阻害して尿中に出してしまおう、というのがこのお薬の狙いです。
詳しい作用機序や注目点は、「逆転の発想?尿糖を増やすSGLT2阻害薬の特徴」「リンゴの木から見つかった糖尿病薬 SGLT2阻害薬」等で説明されていますので、併せてご覧ください。
このようなSGLT2阻害薬ですが、飲み方に注意が必要なお薬でもあります。服用にはどのような注意が必要なのでしょうか?
SGLT2阻害薬服用の6つの注意点
SGLT2阻害薬は1日1回服用すれば効果が持続するといわれています。しかし、SGLT2阻害薬は服用にあたって6つの注意点があります。1. 尿路感染・性器感染症
尿糖が陽性だと「異常値です」と言われますが、本来、尿道は糖分が通過するところではありません。そのため、糖分が雑菌のエサとなってしまうため、雑菌が繁殖しやすい状態になります。尿道と近い位置にある性器も同様の理由で感染を起こしやすくなります。男性よりも女性のほうがリスクが高いようですが、入浴等で清潔にすることが大切です。
2. 低血糖
尿中に糖分が排泄されてしまうので、低血糖のリスクもあります。他の経口糖尿病薬(特に、SU剤、ナテグリニド(スターシス、ファスティック))を服用している場合は要注意です。
3. 栄養状態の悪化、るいそう(やせ)患者における状態の悪化
体重減少が起こりますので、肥満患者には有益であっても、標準体重であったり、るいそう(やせ)のある患者には体重減少は副作用となります。
4. 血中ケトン体の上昇
尿中に糖分が排泄されるので、その分、体内の脂肪がエネルギー源として使われると、血中ケトン体が上昇します(低糖質ダイエットと同じ原理ですね)。そのため、尿中ケトン体が陽性になることがあります。
5. 腎臓への影響
腎機能が低下している患者の場合、腎臓のろ過機能を示すe-GFRという指標がありますが、この指標が悪化する可能性が指摘されています。腎臓での再吸収阻害を狙った薬ですので、腎機能が低下している患者が服用しても効果が薄いとも言われています。
6. 体液量が減少する
糖分が再吸収されないと「浸透圧利尿作用」が働いて、尿量が増加します。治験段階では200ml程度、尿量が増加したといわれています。そのため、頻尿、多尿になることがあります。頻尿、多尿がひいては、口渇、脱水、便秘になりやすいと言われています。服用にあたっては水分を多めに摂ることが必要です。
作用機序も簡単には「SGLT2を阻害して尿に糖分を排泄する」と説明できますが、イプラグリフロジンがどのような動態を経てSGLT2に作用しているのか、SGT2を阻害した場合、同時にナトリウムも再吸収されなくなってしまうと考えられるがナトリウムやカリウムの体内濃度への影響はないのか、など、不明な点も多いお薬です。
さらに、今回、販売が開始されたイプラグリフロジン(スーグラ錠)は2型糖尿病のみ適応となっています。イプラグリフロジンに関しては、2型糖尿病患者で肥満があり、他の経口糖尿病薬で効果が不十分、罹病歴の比較的短い(若い)患者が最も適応があるのではないかとのことです。
現在、イプラグリフロジン以外にも5種類のSGLT2阻害薬が申請中です。現在、ブラックボックスとなっている作用機序の詳細も今後の研究で明らかになってくるでしょう。
今までとは全く異なる作用機序を持つ新薬なので、不安半分、期待半分ではありますが、糖尿病患者の治療の選択肢が増えたことは喜ばしいことだと思います。