超高齢化社会に突入している日本。快適な生活をするために、健康な口腔環境を維持することはとても重要です。もちろん全て自分の天然歯が残っていればそれに越したことはありませんが、差し歯やブリッジ、取り外し式の入れ歯や歯科インプラント治療を行った場合、 それを健全な状態で維持しなければなりません。数か月ごとに定期検診やメインテナンスに通院していたとしても、加齢による組織や機能の低下を防ぐことは限界があります。天然歯に最も近い機能性を発揮できる歯科インプラントですが、周囲組織の変化による影響を受けやすくもあります。ご自分のライフスタイルの変化に応じて歯科インプラントを変化させて、長い間身体の一部として機能させるにはどうしたらいいか解説させていただきます。

歯科インプラントの構造

アバットメントとクラウン

カスタムジルコニアアバットメント(左)とオールセラミッククラウン(右)

現在最も多く使われているのは、歯槽骨内に「フィクスチャー」と呼ばれるインプラント体を埋め込み、歯肉貫通部には「アバットメント」という中間構造体、そしてそれにかぶさる最終的な上部構造=歯の部分の「クラウン」の3つのパーツで構成されているタイプです。中間のアバットメントの目的は様々で、インプラント埋入方向とクラウンの装着方向を修正することや、歯肉貫通部の複雑な歯肉形態に合わせてクラウン接合部をカスタムメイドで作ること。そして、すでに骨結合しているフィクスチャーに無理な負担をかけないように、一定以上の咬合力がかかった時に緩んでくれたり壊れてくれる安全機構の意味もあります。長い歴史の中で様々なタイプのインプラントがありますが、現在最も多いのはこの3つのパーツに分かれているタイプになります。

周囲組織の変化や炎症への対応

プラットフォームスイッチング

プラットフォームスイッチング(長期的な骨の痩せを防ぐ目的で、一回り径の小さなアバットメントで連結)

冒頭にも書いたように、加齢による自然な老化をとめることには限界があります。他の天然歯の周囲組織が痩せてきているのに歯科インプラントだけが何も変化せず変わらないなんてことはありません。インプラントの周囲組織が痩せていくとその部分は隙間になります。隙間ができるとそこには汚れが停滞しやすくなります。もちろんしっかりと入念にお掃除できればいいですが、やはり適切な時期に上部構造だけでもリペアしたほうが快適に使うことができます。骨内のインプラントはそのままで、アバットメントとクラウン、またはクラウンのみを、その時々の周囲組織に合わせて修理したり、または作り替えることも重要です。

靴と同じで、履き心地の良い靴でも、たくさん歩けばかかとはすり減ります。その靴を長く履き続けるには、穴が空いてしまう前にリペアしなければなりません。インプラントも天然歯と同じように周囲組織も炎症を起こすこともあります。しかし、インプラントの場合はクラウンやアバットメントを外して、歯肉の深い部分を直視しながら清掃することができます。これは天然歯では出来ないメリットではないでしょうか?

オーバーデンチャーへの変更

若いころは1本1本単独の固定式の歯科インプラントでとても快適。でも老後手が不自由になった場合、細かなところの掃除を自分自身でできるかが心配。誰かにメインテナンスを手伝ってもらわなければならないかもしれない。

そういった状況を予測して、ある一定の年齢になったら以前の記事「取り外し可能なインプラント治療」に取り上げたように「オーバーデンチャー」という義歯とインプラントをアタッチメントという器具で安定させるタイプに切り替えることを行うようにもなってきました。今まで入っていたアバットメントを外し、突出部分の少ないアタッチメントに変更します。義歯側にもそのアタッチメントを装着して、自分自身で取り外してメインテナンスがしやすいようにするのです。これなら誰かに清掃してもらう際にも簡単になりますし、組織の変化にも対応しやすくなります。

インプラントと長くつきあうためには

今や歯科インプラントは、20代の若い患者様から80代の高齢者の方まで幅広く使用されるようになりました。入れたら入れっぱなしでなく、日々のメインテナンスを欠かさないようにすること、またインプラント部位の周囲組織が大きく変化した場合はアバットメントやクラウンのリペアをすることが長く付き合っていくコツです。その為には、3つのパーツで分けられているタイプのインプラントシステムが有効で、中間構造のアバットメントがなくフィクスチャーと上部構造の1本でつながっているインプラントですと、長期的な変化に対応しにくいと考えられています。それぞれのインプラントに長所・短所はありますので、ご自分の環境に最も適したインプラントシステムを選択しなければなりません。
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