東日本大震災の発生から間もなく丸3年が経過します。被災地の復興は徐々に進みつつあるようですが、被災された方々の本格的な生活再建にはほど遠い状況のようです。今回は、地震と津波、さらには原発事故という被災地の中でも最も大きな影響を受けた福島県に、初めて全棟ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)によるスマートタウンができたという話から、改めて「被災地復興の今」を考えてみたいと思います。

計画的に「安心拠点」を定めた防災の街づくりを実施

そのスマートタウンは、大手ハウスメーカーの積水ハウスが福島市内で開発中の「スマートコモンステージ森合(もりあい)」です。2月22日に街びらき式典が開催されたため、その取材で見学をしてきました。その概要は以下の通りです。
・所在地=福島市森合字上森合1-13他
・交通=JR福島駅より約2.4km
・総開発面積=約10970平方メートル
・総区画数=37区画

街開き

「スマートコモンステージ森合」の街びらき式典の様子。大雪の残雪が残る厳しい寒さの中、地元自治体の幹部や地域の方々も出席。新しい街づくりの手法に対する期待感を述べていた(クリックすると拡大します)

この分譲地の建物は、太陽光発電システムと燃料電池「エネファーム」を搭載したZEH対応商品「グリーンファーストゼロ」(23棟)に加え、これに家庭用蓄電池をプラスした「グリーンファースト・ハイブリッドゼロ」(14棟)で構成されます。

特に後者を分譲地内の主要道路沿いや角地に配置することで、計画的に防災に配慮する取り組みを実施したのが最大の特徴。後者は三つのシステムを搭載していることにより、災害により停電が発生した場合でも電気を確保できたり、入浴が可能になるなど(水道機能が維持されている場合)、通常の生活を続けることができます。

ですから、「グリーンファースト・ハイブリッドゼロ」の建物が、この分譲地に居住する人たちの防災拠点として機能することができるわけ。分譲地だけでなく周辺地域の人たちにも利用してもらえれば(もちろん居住者の理解が必要ですが)、地域コミュニティ全体の防災機能を高めることにもつながります。

この分譲地は積水ハウスとしてはあまり大きな規模ではありませんが、このように分譲地に計画的に防災上安心な拠点という位置づけを持たせながら開発したのは、全国的に見ても初めてといい、今後は同社はもちろん、他のハウスメーカーや分譲住宅供給者にこのような街づくりが広がるものと考えられます。

太陽光発電システムと燃料電池などでZEH化実現

なお、建物は「アルゴンガス封入複層ガラス」と「高断熱サッシ」を採用した「ハイグレード断熱仕様」、「高効率エアコン」「LED照明」などの省エネ設備を採用し、日射・通風配慮設計などのパッシブ技術も取り入れられています。また、太陽光発電システムと燃料電池による創エネで「エネルギー収支ゼロ」が可能とされています。

街の様子

街の中の主要道路沿いや角地には、太陽光発電システムと蓄電池、燃料電池を備えた「グリーンファースト・ハイブリッドゼロ」を建設。これは地域の防災拠点とするためだ(クリックすると拡大します)

光熱費は1世帯当たりで年間約30万円の削減が可能で、分譲地全体で一般家庭約38世帯分に相当する電力(年間約138MWh)を周辺地域に供給し、CO2削減効果も年間で約162t(スギの木約11,500本相当)となると試算されています。

このような特徴から、既に全37棟中35棟が成約済みで、現在、建築工事が真っ盛りの状況でした。では、どのような人たちがこの分譲住宅地を購入しているのでしょうか。そこに今、福島県が抱えている復興の現状が垣間見られます。

関係者に確認したところ、この分譲住宅地は福島市内でも希少な人気のあるエリアで、そのため半数は地域の人たちが購入。そして残る半数が原発事故の被害に遭われた帰宅困難地域の方々だそうです。要するに丸3年建った今になって、ようやく新たな住まいを取得する決断をされた方がいらっしゃるということなのです。

おそらくこの3年間、色々なことに悩んだ末の決断だったのだと思います。「前の居住地、故郷に戻りたい」ですとか、一方では「放射能が家族の健康に及ぼす影響が心配」などと。この分譲地の街びらきの様子を取材しながら、福島県の皆さんが抱える重い現実を感じざるを得ませんでした。

そこで次のページでは、関係者の取材で見えてきた福島県の現状、さらには住まいづくりや住宅取得に関する意識の変化についてご紹介します。そこには、私たちがこれから住宅を取得する上で考えるべき事項もあるはずだと思います。