歯周病が進行する様子
これはまだ歯肉炎と呼ばれる初期の段階。歯肉の赤みもそれほど目立たず、歯石もわずかに見られる程度。
歯石が目立ってきており、上顎の第4前臼歯は歯石がつきやすいというのがよくわかる。歯肉の赤みや腫れも増してきて、口臭も感じられ、歯周炎へと変化している。
さらに進行し、歯石で歯が覆われてしまっている。歯石の中の細菌は死滅しているものの、バイオフィルムの中には多数の細菌が存在していて、歯石の上に新たな歯垢を作り、それがまた歯石となり……と繰り返される状態になる。
一度歯石ができると歯垢がつきやすい環境となり、それを放置すれば、このような壊滅的様相を示すようになってしまう。歯と歯肉との間には化膿液も見られ、ほとんどの歯がぐらついているために、抜歯をするしか方法がなくなる。
さらに細菌が繁殖し続けると、やがて歯根周囲部分を経て、歯根周囲の骨までをも溶かしてしまう。骨にはトンネルができ、口の中や皮膚に穴を開けてしまうことも。これには、体の外側に穴が開く外歯瘻(がいしろう)と、口腔内に穴が開く内歯瘻、次の写真の口鼻瘻管(こうびろうかん)がある。
口腔と鼻腔とを隔てる骨の厚さは、大型犬で約2mm、中型~小型犬で約1mmと想像以上に薄く、骨が溶け出すと容易に穴が開いてしまう。こうなると、クシャミや鼻汁、鼻からの出血などの症状が見られるようになる。クシャミが止まらない場合は、この口鼻瘻管であるケースも意外なほど多い。
下顎骨に歯周病が進行し、骨が溶け出すと、下顎の骨が吸収されて薄くなった結果、硬いものを齧った時に簡単に下顎の骨が折れてしまうことがある。小型犬の場合は、下顎の骨の厚さに比べて歯が大きいため、骨折もしやすいので注意。
これはどういうことかというと、大型犬の場合は歯根部の底が下顎の骨の底より高い位置にあるのに対して、小型犬の場合は歯根部の底が下顎の骨の底とほぼ同じような位置にあるのです。体を小型化しても、歯の大きさそのものはそれに見合うほど小さくはなっていませんので、歯のこと一つをとっても必要以上の小型化というのは、犬自身の体にとっていろいろと弊害を起こすということです。
続いて、歯周病以外にわりと多く見られる歯のトラブルについても、次のページに挙げておきましょう。こういうこともあり得るのか……という例です。