完全デビューを果たした18歳が、開幕ローテーション入りに大きく前進した。
2月23日、セルラースタジアム那覇で行われた巨人とのオープン戦に初先発した松井裕樹投手は、巨人の主力である坂本勇人内野手(25)と村田修一内野手(33)から三振を奪うなど、2回を無安打無失点2三振に抑える“パーフェクト・ピッチング”を披露した。完全デビューを果たした18歳は、田中将大投手(25)が抜けたローテーション入りに大きく前進した。
初のオープン戦のマウンド。一回の投球練習の5球目をバックネットに暴投した。「ガシャーン!」という大きな音で金網を揺らし、1万4282人観衆はざわめいたが、松井裕が動じることはなかった。普通、投手コーチから「1球ぐらいバックネットに当てた方が落ち着く」と言われるが、本当に当てる投手はまずいない。
「あれ(暴投)があったのでよかったです。全力で腕を振って、球が上ずらないようにした」と逆に軌道修正のきっかけにしてしまった。この強心臓ぶりが投球にあらわれる。
一回先頭の坂本をカウント2-2に追い込んだ後、ベース付近でワンバウンドする内角スライダーで空振り三振に仕留めた。「スライダーは切れがある。あまりプロでは見ないようなボールだった」と坂本は、このスライダーが超一級品であることを認めた。そして、二回先頭の4番・村田にはストレートとスライダーで追い込み、9球目となる130キロの外角チェンジアップで空振り三振に斬って取った。「スライダーは曲がり幅が大きい。(元西武の)石井一久さん、阪神の岩田のようなイメージ。曲がったところからさらに一段階曲がる。チェンジアップはイメージしていたけど、高さが良かったね」と村田は脱帽。スライダーはもちろんだが、左投手としては今や必需であるチェンジアップも“使える”メドが立ったことが、松井裕には大きかった。
2回を打者6人、25球で打ち取った。「すごい打者が並んでいるので気持ちが緩むことはなかった。全力で打ち取ろうと思った。点数? 60点から70点くらいです」と謙虚に答えた松井裕だが、星野監督は高い評価を与えた。「課題は見当たらなかった。実戦派だな。2回とはいえ立派なものよ。他のやつがダラダラしていたら(開幕ローテ―ション入りは)十分ある」と断言。また、正捕手・嶋のサインに何度も首を振ったことと、自己採点が60点だったことについては、「長年やっていても捕手の要求通りに投げて打たれるやつばかりだが、松井は自分で配球を組み立てている。60点? まだ40点もあるのか」と目を細めた。
田中の後継者になるにはまだまだ道は厳しいが、その可能性“伸びしろ”を十分に示した松井裕の初登板だった。